(筆洗) 増税の方針をなぜ総選挙の時にきちんと示さなかったのか - 東京新聞(2017年12月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017121602000144.html
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世界で最も裕福な八人と、世界の経済的に恵まれていない方の三十六億人の資産額はほぼ同じ、との試算がある。何とも極端な富の偏在だが、その八人の一人ウォーレン・バフェット氏(87)がかつて、「大金持ちを甘やかすな」と主張したことがある。
「わが国の指導者たちは“犠牲を分かち合おう”と言うくせに、私には、それを求めない。投資で年収が五十億円もある私に課せられる税率が、一般の労働者より、かなり低いのだ。もっと富裕層に課税せよ」と提言したのだ。
超のつく富豪が「もっと税負担を」と言いだすほど米国の税制はいびつらしいが、わが国はどうだろうか。
この国の税制も、米国に負けず劣らず、富裕層にはやさしいらしい。株式の配当や売却益にかかる税率を5%上げただけで数千億円もの税収増につながるという試算もあるのに、今回の税制改正では論議の的にもならなかったという。
年収八百五十万円超の会社員らの勤労所得を増税の的に九百億円の税収増を見込みつつ、株高で潤い年収二億円を超すような超富裕層が優遇される現状は、手つかず。これで「犠牲を分かち合う」ことになるのだろうか。
いや、そもそもこれほどの増税の方針をなぜ総選挙の時にきちんと示さなかったのか。これらの問いを突き詰めなければ、バフェット氏に、こう叱咤(しった)されるかもしれぬ。「政治家を甘やかすな」