<金口木舌>乳児のいる議会 - 琉球新報(2017年12月6日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-625533.html
http://archive.is/2017.12.06-000929/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-625533.html

中部のとある市議会を傍聴した時のこと。審議中なのに議場で談笑し、不用意に席を立つ議員が複数いる。あきれて傍聴席でぼやいた。「やる気があるのか」
▼やじと空転は議会に付きもの。傍聴していて幾度も腹を立てた。そんな議会も議員の自覚と真摯(しんし)な議論で豊かなまちづくりの場となる。有権者たる市民の監視も必要だ
▼緒方夕佳熊本市議が乳児を抱いて本会議場で着席し、混乱を招いた。「議会の開会が遅れたことは申し訳ない」と緒方市議はわびたというが、子育てに悩む女性の声を可視化したいという意図に共感する
▼市議を厳重注意したという議会に対し「女性活躍に逆行する」という批判が上がった。「子連れで責務を果たせるのか」という意見もある。ネット上でも議論が飛び交う。可視化したいという意図はかなえられたようだ
▼かつての「アグネス論争」を思い出す。子連れで仕事に臨んだタレントのアグネス・チャンさんの行動に賛否の声が沸き起こった。あれから30年が過ぎた。過剰気味だった論争を経て、子育て環境は前進しただろうか
▼空転や下品なやじの横行は気になるが、乳児を抱いた市議が並ぶ議場を傍聴したいという思いに駆られる。乳児の笑い声が響いても、議員の無駄な私語よりは審議の妨げになるまい。何より、子育てを支えるまちづくりの模範となること請け合いだ。