教育支出負担重く 官民挙げた支援策を望む - 琉球新報(2017年11月24日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-618655.html
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県内高校の卒業者が大学・短大に進学する割合は2016年度に39・2%で全国(54・7%)とは15・5ポイントの開きがある。だが進学率が25・2%だった復帰直後の1973年度と比べれば、県内の高校生が進学する割合は14ポイントも上昇している。
学ぶ意欲が高まった現れだが、離島県ならではの課題は多く残されている。その一つが世帯収入に占める教育費の割合の高さだ。
沖縄振興開発金融公庫が発表した16年度の国の教育ローン利用状況調査によると、年収200万円未満の世帯では教育支出が106・0%に上る。離島居住者に限れば、年収200万円未満世帯の教育支出は世帯収入の115・9%にもなる。
教育費が家計を圧迫する状況が調査からは見てとれる。学びたい子ども、学ばせたい保護者の意思を尊重するには、金利優遇などにとどまらず、返済不要な奨学金の拡充といった官民を挙げた支援策が求められている。
沖縄公庫が手掛ける国の教育ローンは、ここ数年融資額、件数とも過去最高を更新している。県内の進学意欲の高まりもあるが、沖縄公庫が離島居住者を対象に金利を引き下げる制度や、ひとり親世帯の金利を優遇する制度を創設したことも寄与している。
保護者にとっては、借りやすい環境はできたといえる。だが総務省が発表した最新の県民所得(14年度)で、沖縄は1人当たり212万9千円で全国最下位となっている。全国平均の305万7千円と比べれば、約7割しかない。
もともと所得が少ない上に教育費への支出が重なれば、進学を諦める事例も出てくる恐れがある。
沖縄公庫の分析では世帯年収が高いほど県外への進学率も高くなり、世帯年収が進路に影響を与えることもうかがえるという。さらに「家庭の経済状況や居住地域によって学生の教育環境が制約されることのないよう各方面の支援拡充を期待したい」と指摘している。
全ての人に学ぶ権利があり、文化的な生活を営む権利があることは憲法で保障されている。個人の意欲や能力があるのに、家庭の経済状況や生まれた場所によって学ぶ権利が制限されることは本来あってはならないことだ。
沖縄に限らず、離島を抱える他の県でも同様の状況があると考えられる。
離島居住者や低所得層にとって、教育支出はわが子、未来への投資といえる。常に学ぶ場への門戸は開いておくべきだ。政府の「人生100年時代構想」は「子供たちの誰もが経済事情にかかわらず夢に向かって頑張ることができる社会」の実現を掲げている。
国家100年の計は教育にある。教育の根幹は人づくりだ。国の未来を担う人材を経済的な事情で埋もれさせてはならない。全ての人が平等に学べる制度設計を望む。