(外国人技能実習 新法)安い労働力確保やめよ - 沖縄タイムス(2017年11月3日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/165618
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途上国の人々が、日本で働きながら技能を身に付ける外国人技能実習制度の改革を目的とした新法「技能実習適正化法」が施行された。実習生に低賃金労働をさせるなどの不正監視を強める一方、優良な受け入れ先は実習期間を5年まで延長できるようにした。また、実習対象の職種には、初めての対人サービスとなる「介護」を加えた。
同制度は、途上国の人材育成に貢献する目的で1993年に導入。実習生は今年6月末現在25万人以上おり、中国やベトナム出身者が多い。
主に農業や製造業、建設業などの技術職場が受け入れ先となるが、近年、過酷な実習(労働)環境による失踪者が多発している。失踪を防ぐ目的で、事業所がパスポートを取り上げる人権侵害も目立つ。実習生に対し、違法な長時間労働や賃金不払いなどの労働関係法令違反は昨年、約4千件に上った。
そのため新法は、実習受け入れ先の監視機関「外国人技能実習機構」を新設。受け入れ事業所などに技能実習計画の作成を課し、同機構の認定を受けることとした。また、暴行や脅迫などで実習を強制するような人権侵害には、罰則も設けた。
ただ同時に実習の受け入れ対象となる職種を、従来の74種類から77種類に拡大しており、監視機関1カ所でどれだけ実習生一人一人の人権が保護されるか先は見通せない。
政府が外国人の単純労働者を受け入れない姿勢を貫く中での、実習生の受け入れ拡大は、国際貢献を隠れみのにした安い労働力確保のそしりを免れない。

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新たに実習先に加えられた介護職を巡っては、今年9月、外国人の在留資格に「介護」を新設する「出入国管理及び難民認定法入管法)」の改正法も施行された。
これにより実習生でなくても、日本の大学や専門学校で学んで介護福祉士の資格を取れば、国内でそのまま働けるようになった。
介護現場の人材難は深刻だ。政府は、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年度には、介護職が38万人不足すると推計する。
相次いで施行された在留資格の適用拡大や実習生の受け入れ拡大は、建前と別にこうした人材不足解消を企図している。
一方、介護現場での外国人就労は、これまで政府間の経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシアなど3カ国からも受け入れてきた。母国で看護師の資格を持つ人を対象とするが、日本語能力や日本での資格取得などが壁となって、働くのは2千人程度にとどまる。

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熟練が必要な介護職では、こうした短期の研修制度をあてにする働き方で質の維持を確保することは難しい。
そもそも人材不足の大きな要因は、介護職の待遇の悪さだ。夜勤、泊まり勤務が日常的に発生するにもかかわらず、月給は全産業平均より10万円以上も低い。
課題を棚上げにしたまま、人材育成事業を人手不足解消に転換するような政策は、根本から見直すべきだ。