9条改憲反対集会 戦争は人権を奪う 元最高裁判事・浜田さん訴え - 東京新聞(2017年11月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201711/CK2017110402000131.html
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国会周辺で三日に開かれた九条改憲反対集会で、「憲法の番人」である最高裁の判事だった弁護士、浜田邦夫さん(81)が壇上に立った。戦争を身をもって知る浜田さんは「衆院選では自民党が大勝したが、民主主義、立憲主義、法の支配を守るため、国民一人一人が勇気を持って発言していくことが必要だ」と訴えた。 (清水祐樹、小川慎一)
憲法改正の検討自体は反対しない。しかし、安倍政権の近年の独裁的な手法、やり口を認めるわけにはいかない。安倍政権が目指しているのは戦争ができる普通の国。これは戦前の日本に戻るコースだ」。集会で浜田さんが力強く呼び掛けると、集まった市民から大きな拍手が起こった。
敗戦時、浜田さんは九歳だった。戦後は企業法務の弁護士として活躍し、二〇〇一〜〇六年に最高裁判事を務めた。退官後の一五年九月の参院公聴会では、集団的自衛権の行使容認を「違憲だ」と指摘。元最高裁判事としては異例の行動だったが「民主主義の危機に黙っていられなかった」。
幼少時は、いとこが日本軍の偵察機に乗っていたこともあり「大きくなったらパイロットになりたかった。米軍の戦艦を撃沈したという新聞記事を喜んで読み、戦争に夢中になっていた」。しかし、一九四五年六月、当時住んでいた静岡市で大空襲に遭う。町は焼け野原。自宅近くの道端では、上半身のない死体を見た。大人たちからは「米軍が上陸してきたら、がけから飛び降りろ」と聞かされていた。
戦争を体験した者として特定秘密保護法や安全保障関連法の成立には、戦前と似たような「重苦しい空気」を感じる。「戦争は基本的人権を奪う。悲惨な状況だった。戦争とはどういうものかをきちんと伝えきれなかった私たちの世代にも反省材料はある」と自戒を込める。
国際ビジネスの現場を通して分かったのは、憲法九条の思わぬメリットだという。「米ソの冷戦構造の中、軍隊を持たない日本は中立的な立場として好感を持たれ、どの国からも受け入れられやすかった」。しかし、最近は変わってきた。「日本人が海外で襲撃され犠牲になっているのは、安倍内閣での一連の立法が要因の一つだ」と考える。
衆院選で大勝した安倍晋三首相は、自衛隊の存在を明記する改憲に意欲を示すが、浜田さんは「戦力の不保持と交戦権の否認を規定する九条二項と矛盾し、二項が空文化する恐れがある」と危惧している。
浜田さんはこの日の集会で、北朝鮮への圧力強化による緊張の高まりなどを巡って「いったん戦争が始まれば被害を受けるのは米本土ではなく日本にある米の軍事施設や原発、日本の施設であり国民だ」と述べた上でこう話した。「安倍首相の口先にごまかされて、国民は裸の王様になっているのではないか。米国による安全保障とか、国内での安全・安心な暮らしといった立派な着物を着ていますよと言う、仕立屋の『テーラー安倍』に」