深夜働く親たちの支え 数足りぬ夜間保育園 - 東京新聞(2017年11月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201711/CK2017110302000163.html
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深夜営業の店舗が増え、夜間でも診てくれる医療機関もある。便利に安心して暮らせるが、深夜も働く人の幼い子どもは、その間どうしているのだろうか。そうした子の多くが通うのが夜間保育園だ。認可が始まって三十六年がたつが、その数は大きく増えておらず、全国で八十一カ所にとどまっている。 (稲熊美樹)
名古屋市中区の金山総合駅の近く。繁華街の一角にある「かわらまち夜間保育園」には、〇〜五歳児計二十五人が通う。平日の午後六時すぎ、二階にある一歳児以上の「ゆうがお組」の部屋に、二十人ほどの子どもたちの明るい「いただきます」の声が響いた。鶏肉の梅マヨ焼きにマッシュポテト、きんぴらごぼう…。かき込むように食べる子もいれば、おしゃべりに夢中で箸が進まない子も。
食べ終わると、保育士が「お風呂入ろう」と声を掛けるが、子どもたちは遊びに夢中。気が向いた子から順に入り、歯磨きをして、紙芝居を楽しんだ。
午後八時五十分。赤ちゃんたちが眠っている和室で、子どもたちも布団に入る。しかし、寝付いた途端「うわーん」と赤ちゃんの泣き声。保育士が抱き上げてもなかなか泣きやまず、他の部屋へ。別の保育士は呼吸を確認しながら、子どもたちを見守る。間もなく、近くの学童保育所からも児童と職員が合流した。午前一時までの間、迎えに来た保護者は保育士からその日の様子を聞き、子どもを抱いて帰っていく。
保護者には、自営の飲食店や医療機関などで働く人が多い。深水高雪園長は「保護者は、子どもの生活に合わせて働く時間を変えたいと思っても、簡単にはできない。保護者が働く権利を保障するのも園の役割になっています」と話す。
保育園の認可基準に、昼と夜で大きな違いはないが、同園では安全のため夜は男性職員が一人以上いることにしている。昼食とおやつに加えて、夕食もあるため、調理を担当する職員も昼間の園より多い。
厚生労働省によると、認可を受けて日中を中心に開所する保育所などは全国に約三万三千カ所。一方、認可夜間保育所は八十一カ所のみで、どこの園もほぼ満員。夜間保育園で受け入れられる子どもは全国で計三千人ほどになるという。
だが、夜間に子どもを預かる施設は認可保育園だけでは到底足りていない。夜間や一時的な託児に応じる「ベビーホテル」といわれる認可外の施設もあるが、保育士の数などは認可の基準には達していないところが大半とみられている。
夜間保育園が初めて認可されたのは一九八一年。以降、社会の夜型化は進み、ニーズは強まっているのに対し、園の数は大きく変わらない。「夜間保育は子どもによくない、という思い込みがあるため」と全国夜間保育園連盟の天久薫会長(福岡市の第二どろんこ夜間保育園園長)は指摘する。
しかし、同連盟と筑波大大学院の安梅勅江(あんめときえ)教授が共同で実施した研究では、夜と昼の保育園児で、心身や知能の発達に違いはみられないという。天久会長は「保育が必要なのは昼間だけではない。ぎりぎりまで頑張っている親や子どもの命を守る場だ」と話す。

◆各地でドキュメンタリー映画
ドキュメンタリー映画「夜間もやってる保育園」が全国各地で公開されている。大宮浩一監督は「取材に行くうち、おいしそうな夕飯を囲んで子どもたちがきゃっきゃと楽しむ姿を見て、いいなと思えた。夜間保育園があることを知ってほしい」と話す。
上映予定は以下の通り。
ポレポレ東中野(東京都中野区)公開中▽横浜シネマ・ジャック&ベティ(横浜市)18日から▽CINEMA AMIGO(神奈川県逗子市)時期未定