(筆洗)自民党が国会での野党の質問時間を削減し、その分、与党の質問時間を増やすことを検討 - 東京新聞(2017年10月31日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017103102000128.html
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木守(きも)り柿とは、木の梢(こずえ)に一つだけ、あえて取らず残しておく柿の実のことである。残し柿ともいう。木枯らしに揺れる柿の実一つとは、寂しい風景にも映る。
こんな意味があるそうだ。一つは来年もまた柿がなりますようにという願いや感謝の気持ち。もう一つはおなかをすかせた野鳥への「おすそ分け」なのだそうだ。自然に対し「分け前」を用意したのか。いわれを聞けば、寒々しい柿の風景が温かい。
木守り柿とは無縁な考え方に木枯らし1号がひどく身にしみる。自民党が国会での野党の質問時間を削減し、その分、与党の質問時間を増やすことを検討しているという。総選挙での大勝で「鳥に分け前をやる必要はない」とでも考えているのだとしたら、与党のおおらかさも気概も感じない話である。
政府と与党が事実上一体化している現状を考えれば、その見直しは身内の政府に温かい目を増やし、野党の厳しい目を減らすことに他ならぬ。
たとえは悪いが、縁故入社の面接試験のようなもので、国会全体の行政、法案に対するチェック力を弱めるだろう。野党の耳の痛い質問時間はもいではならぬ民主主義を守る柿である。
自民党のためでもある。「総理、ご苦労さまです」のゴマスリ質問ばかりとなれば、自民党議員の評判、印象にも障る。それにである。政界は一寸先は闇。野党に転落した場合のことも少しは…。