<金口木舌>土どろぼう - 琉球新報(2017年10月25日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-601332.html
http://archive.is/2017.10.25-233941/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-601996.html

フォーク歌手の佐渡山豊さんに「海どろぼう」という歌がある。軽快なメロディーに乗せた歌詞は切実だ。病気を引き起こす海洋汚染を嘆き、きれいな海を返せ、汚してくれるなと訴える

▼1974年の作品である。「正体不明の不思議なやまい」とあるのは、工場排水が引き起こした水俣病を指していよう。歌のメッセージは復帰後、急激に進んだ乱開発にも当てはまる。自然や文化遺産の破壊が進み「沖縄の危機」が叫ばれた時代だった
▼海を返せ、汚してくれるなという訴えは今こそ重みを持つ。「海どろぼう」が今ものさばっている。辺野古の海を汚し、サンゴを押しつぶす“泥棒”が政府なのだから始末が悪い
▼海だけかと思ったら、今度は「土どろぼう」が横暴を振るった。CH53ヘリが不時着し、炎上したやんばるの牧草地から土をどっさり持ち出した。日米地位協定を笠(かさ)に着た米軍である
▼おかげで県警は現場検証ができず、県も土壌汚染の調査が困難となった。豊かな牧草を育てるため、30年にわたって土づくりに励んできた地主は落胆している。取り締まる術はないものか
▼まずは戸締まりだ。海、空のどろぼうを撃退するため県民が「民意」という名の鍵をかけたのが衆院選だったと言える。それを無理やりこじ開けるのが日米両政府の所業だ。もうこのような無謀をやめてもらおうではないか。