改憲・消費税… 焦点の4テーマ、各党の立ち位置は - 朝日新聞(2017年10月22日)

http://www.asahi.com/articles/ASKBN436RKBNULFA00T.html
http://archive.is/2017.10.22-012155/http://www.asahi.com/articles/ASKBN436RKBNULFA00T.html


12日間にわたって繰り広げられた与野党の論戦が21日、幕を閉じた。対立軸が明確な憲法9条改正、消費増税原発、森友・加計(かけ)学園問題と情報公開という四つのテーマについて、各党の立ち位置をまとめた。

改憲 9条、各党立場くっきり
憲法9条をめぐっては、自民党日本維新の会日本のこころが賛成で、希望の党が前向きだ。公明党が慎重姿勢で、共産党社民党は明確に反対。立憲民主党安倍晋三首相の提案には反対の立場だ。
自民は公約集の柱に憲法改正を掲げ、首相が提案した9条への自衛隊の明記など、四つの改憲項目を列挙する。
これに対し、公明は公約で、首相の自衛隊明記案について「意図は理解できないわけではないが、多くの国民は自衛隊の活動を支持し、憲法違反の存在とは考えていない」とする。
野党で9条改正に明確に賛成なのは維新だ。公約に「9条改正」を掲げ、松井一郎代表は「自民党案が固まってくれば、まじめに正面から議論したい」と話す。希望も公約に「9条をふくめ憲法改正論議をすすめる」と盛り込んだ。小池百合子代表は自民党時代から9条改正に前向きだが、自衛隊明記案については「大いに疑問がある」と否定的な考えを示す。
立憲は、首相による衆院解散権の制約など、憲法に関する論議は否定していないが、集団的自衛権の行使を可能とする安全保障法制を前提とした9条改正には反対する。共産、社民は憲法改正そのものに反対で、共産の志位和夫委員長は選挙戦で「9条を守り、9条を生かした日本を作ろう」と訴えてきた。(二階堂勇)

■消費税 19年10%か、凍結か中止か
2019年10月に予定される消費税率10%への引き上げについて、自民、公明は実施して税収増の一部を教育無償化などに使う立場だ。これに対し、希望、立憲、維新、こころの野党4党は増税の凍結を主張する。共産、社民は消費増税自体に反対で、将来も実施しない立場だ。
自民は消費増税によって得られる年5・6兆円の税収増のうち、約2兆円を教育無償化などに充てると主張。3〜5歳は幼稚園と保育園をすべて無償化し、0〜2歳も低所得世帯は無償にするという。公明は対象を広げ、0〜5歳児すべてを無償にするとしている。
幼児教育の無償化は維新、共産、社民も掲げ、3党は大学など高等教育の無償化も主張している。財源は消費増税の代わりに大企業や富裕層への増税や、議員の報酬カットなどの歳出削減を想定している。
大和総研の是枝俊悟研究員によると、消費増税をすると、自由に使える実質可処分所得は、片働きの年収500万円の4人家族で月約4千円、年収1千万円なら月約7千円減るという。
野党の主張通りに増税を凍結・中止すれば、こうした負担増は避けられるが、その分、国の財政状況が悪化する可能性がある。与党は消費増税による税収増の一部を国の借金返済に回すことにしているからだ。(長崎潤一郎)

原発 再稼働推進から「即ゼロ」まで
6年半前の東京電力福島第一原発事故による避難者はなお5万人を超え、廃炉作業の先行きも見通せない。その原発を将来も利用し続けるか「ゼロ」をめざすか、足元で再稼働を認めるか、という論点で立場が分かれる。
自民は原発を「ベースロード(基幹)電源」と位置づける。安倍政権は30年度までに電源に占める比率を20〜22%にするとの目標を掲げ、30基程度を再稼働させる方針だ。原発事故後、安全対策費が膨らみ、欧米では原発廃炉や建設計画の撤回が相次ぐが、こうした流れとは一線を画する。
維新も「世界標準の規制」を満たすことを条件に再稼働を進める。
公明は、達成の期限は明示せずに「原発ゼロを目指す」と公約でうたうが、現実には自民と歩調を合わせて再稼働を進めてきた。希望も当面の再稼働を認める一方で、「30年までの原発ゼロ」を掲げる。
これに対し、最も厳しい姿勢をとるのが「即時原発ゼロ」を掲げる共産だ。早期の原発ゼロを目指す立憲、社民を合わせた3党が、現状で再稼働を認めない。原発の代わりに太陽光など再生可能エネルギーを増やす考えだが、その道筋は必ずしも明確ではない。(斎藤徳彦)

■森友・加計 行政透明化、姿勢に濃淡
森友・加計問題をめぐっては、関係する省庁が議事録などの関連文書について「破棄した」「ない」などと説明し、ずさんな公文書管理や消極的な情報公開に批判が集まった。選挙戦では、野党が問題の徹底追及や法改正による透明性の向上を掲げ、与党は運用の見直しなどによる改善を公約に盛り込んでいる。
立憲は情報公開法を改正し、行政を透明化することを公約に盛り込む。枝野幸男代表は「資料を出す。情報公開をする。まっとうな民主主義の大前提だ」と選挙戦で訴えた。希望も森友・加計問題の関連情報を「すべて公開」とし、公文書管理法の改正で文書の恣意(しい)的な廃棄を禁じるとした。
共産は重点政策の一番目に森友・加計問題への対応を掲げ、社民とともに公文書管理と情報公開のあり方を根本から改めると主張。関係者の証人喚問を求めて徹底追及するとしている。
これに対し、自民は「国会で丁寧に説明を重ねてきた」(安倍首相)との立場。公約では森友・加計問題への具体的な言及はなく、「行政文書の適正な管理に努める」とした。公明は公文書管理のガイドライン改正を掲げて情報公開体制を整備するとしている。(木村和規)