(大弦小弦)「三国志」で人気が高い魏の曹操は… - 沖縄タイムズ(2017年10月22日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/159242
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三国志」で人気が高い魏(ぎ)の曹操(そうそう)は「郷挙里選(きょうきょりせん)」という後漢の人材登用制度で官僚となり、立身出世を遂げたとされる。この制度が選挙の語源となっている。

言葉こそ同じだが現代の選挙とは逆で、有力者が無官の人を取り立てる仕組み。中国に限らず、庶民にはもともと選挙権などなかった。日本で男女平等の普通選挙が可能になったのは1945年。先人たちの粘り強い訴えもあって獲得された。その常識は共有されていないのか。そう思わせる出来事が起きている。若い世代に影響力のある批評家が、首相の解散権独占や投票の選択肢が少ないことへの異議として「積極的棄権」の賛同者の署名を集めネット上で話題に。2014年の前回衆院選投票率52・66%、16年参院選は54・7%で6割に届かなかった。14年の20〜39歳、16年の18〜39歳の投票率は5割を切った。若い有権者で棄権は既に多数派だ。思い浮かぶのは政治学丸山真男の名著「日本の思想」に出てくる「権利の上にねむる者」という表現。憲法が保障した諸権利は「国民の不断の努力によってこれを保持しなければならない」(12条)との一文も引用されている。18歳からの選挙権が認められて初の衆院選。消極、積極のいずれでも棄権は「不断の努力」を怠る行為だ。22日は権利の寝床から起き上がり、一歩を踏み出す日。(玉城淳)