逃げ場失い「指導死」 教員から激しい叱責 福井中2自殺 - 東京新聞(2017年10月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017102002000280.html
https://megalodon.jp/2017-1020-1550-55/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017102002000280.html


福井県池田町立池田中二年の男子生徒=当時(14)=の自殺は、教員の厳しい指導や叱責(しっせき)が原因だったことが明らかになった。町の調査委員会がまとめた報告書からは、追い詰められる生徒の姿が浮かぶ。専門家は、教員の指導が原因で子どもが自ら命を絶つ「指導死」の典型だと指摘。逃げ場を失った子どもたち、その保護者に「緊急避難のためには学校に行かないことも重要だ」と呼び掛けている。

▼土下座
「担任、副担任の厳しい指導、叱責にさらされ続けた生徒は、孤立感や絶望感を深め、自殺するに至った」。十五日に町の教育委員会が公表した調査委の報告書は、自殺の原因をこう指摘し、それまでの経緯をつづった。
昨年十月のマラソン大会当日。運営担当だった生徒は、準備の遅れを理由に担任から校門前で怒鳴られた。目撃した生徒は「(聞いている人が)身震いするぐらいだった」と証言した。
同十一月には副担任から未提出の課題について追及される。「できないならやらなくてよい」と突き放す副担任に、生徒は「やらせてください」と土下座しようとした。

▼教員のいじめ
生徒はSOSを出していた。自殺後に行われたアンケートで、この生徒が「死にたい」と口にしていたのを、複数の生徒が耳にしていたことが判明する。
なぜ救えなかったのか。報告書は「学校の対応に問題があったと言わざるを得ない」と批判。教員の一人は、生徒の特性に合った指導方法を考えるよう担任に助言したが、担任は「手加減している」と答えたという。
校長と教頭は、担任の大声での叱責や、生徒と副担任との関係に問題があると把握してはいたが、担任や副担任から逐一報告があったわけではなく、学校を挙げて生徒に寄り添った対応をすることはなかった。
生徒の母親は「教員によるいじめだ。他の先生も見て見ぬふりをした」と強く非難した。

▼氷山の一角
「まさに『指導死』だ」。この言葉を提唱した「『指導死』親の会」共同代表の大貫隆志さん(60)はそう指摘する。
大貫さんによると、新潟県で二〇一二年に自殺した県立高三年の男子生徒のケースも指導死に当たるという。この生徒は、部活の不満を会員制交流サイト(SNS)に書き込んだことに対する顧問の指導を契機に命を絶っていた。
文部科学省の問題行動調査によると、〇七〜一五年度に自殺した小中高生のうち、「教職員との関係で悩んでいた」と学校から報告があったのは計十三人。
だが「統計は氷山の一角。指導死は体罰を伴わないケースが多く、表面化しにくい」と大貫さん。「多くの教員が大声での指導を問題視しておらず、教員一人一人が認識を改める必要がある」と話した。