(米軍ヘリ飛行再開)住民無視 政府にも責任 - 沖縄タイムズ(2017年10月19日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/158072
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事故原因が解明されないまま、再発防止策を公表することもなく、米軍は昨日、大型輸送ヘリCH53の飛行を再開した。東村高江の民間地で同型機が炎上・大破した事故からわずか1週間しかたっていない。
具体的な原因には触れず一方的に「安全宣言」した米軍の対応は、住民感情を無視した強引なやり方で、到底容認できない。「遺憾」と不快感を示すだけの日本政府の対応も当事者意識を欠き、ふがいない。
普天間飛行場所属のCH53が黒煙を上げ炎上したのは、民家から300メートルしか離れていない場所で、県道からも近かった。住民を不安に陥れ、県民に強い衝撃を与えた重大事故である。
にもかかわらず海兵隊は専門家が整備記録を調べた結果、運用上の問題はなかったとして飛行を再開。ニコルソン四軍調整官は「私自身が安全でないと感じる航空機の運用を許可することはない」とコメントした。海兵隊トップとは思えない横柄な説明だ。
オスプレイの墜落や緊急着陸などのトラブルが頻発し、米軍の航空機整備、安全管理が問われているというのに、安全性判断の根拠も示さず「安全」とは言葉を失う。
復帰後、米軍機関連の事故は700件を超える。安全だと言いながら事故が繰り返されていることに、県民は「命がないがしろにされている」と怒りを募らせているのだ。
事故の原因究明と結果の公表、防止策という当たり前の手順さえ踏めないのなら、駐留軍の資格はない。

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今回の炎上事故、昨年12月の名護市安部でのオスプレイ墜落事故、2004年の沖縄国際大学へのヘリ墜落事故は、いずれも民間地で起きた。本来なら日本側が捜査に当たるべきなのに、米軍が現場を封鎖し県警は締め出された。
沖国大の事故後、日米は米軍機事故のガイドラインを策定したが、「米軍優先」の状態は変わっていない。
日米地位協定には「公共の安全に妥当な考慮を払う」とある。住民生活に深刻な影響を与える訓練が認められているわけではないのだ。
ヘリ炎上事故で、地元高江区は周辺6カ所のヘリパッドの使用禁止を決めた。県議会も同様の決議を全会一致で可決し足並みをそろえた。東村議会も抗議決議を可決した。
地元の声を無視して一方的に飛行を再開する権利まで米軍に与えているのか、政府に問いたい。

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高江の事故現場を視察した翁長雄志知事は「沖縄にとって国難」だと怒りをあらわにした。飛行再開に対しては「日本国から守られている感じがしない」とも語った。
政府は、戦後一貫して安全保障上の理由から、沖縄の米軍基地を積極的に評価してきた。半面、本土の反対を理由に米軍部隊や米軍基地の移転には消極姿勢に終始してきた。その結果、沖縄では今もなお米軍の事件事故が相次いでいるのだ。
知事の言葉は沖縄の苦難の歴史の中から発せられたものである。米軍の「独走」を許している政府の責任は重い。