(余録)医師や看護師らが患者の自宅を訪れて… - 毎日新聞(2017年10月16日)

https://mainichi.jp/articles/20171016/ddm/001/070/220000c
http://archive.is/2017.10.16-012523/https://mainichi.jp/articles/20171016/ddm/001/070/220000c

医師や看護師らが患者の自宅を訪れて病状の悪化を防ぐ取り組みを「アウトリーチ」と呼ぶ。教育や福祉でも困窮状態の子どものいる「現場」に出向くことが必要だ。学校や施設で待っていてもSOSは聞こえない。
最近は意外なところで「アウトリーチ」という言葉が使われている。制服姿の女子高生らに接客をさせる「JK(女子高生)ビジネス」で、少女を街でスカウトすることを「アウトリーチ」と呼ぶそうだ。
女子高生が男性客とおしゃべりやゲームをするだけでなく、裏で違法な性的サービスをさせる店もある。東京都は18歳未満による接客の禁止、悪質な業者への罰則などを定めた条例を制定した。JKビジネスへの規制は広がっている。
なぜ女子高生はJKビジネスにひかれるのか。警視庁の調査では「高い給料がもらえる」と友達に誘われて始める子が多い。家庭に問題があり、学校にも通えないという子も少なくない。
アウトリーチの巧みさを指摘するのは、性被害や薬物依存で苦しむ少女らを支援する一般社団法人「若草プロジェクト」の村木太郎理事だ。「君のようなすてきな人が必要なんだ。よく来てくれたね。助けてくれてありがとう」。そんな言葉に少女たちは心をつかまれる。
家庭でも学校でも説教や小言を聞かされている子が求めるのは、うそでも自分のことを認め、必要としてくれる場所だ。しかし、甘い言葉の向こうには性暴力や覚醒剤のわなが待っている。福祉や教育のアウトリーチが負けてはならない。