<衆院選>教育無償化 改憲を持ち出さずとも - 東京新聞(2017年10月14日)

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教育費の重圧から家計を解放して、教育の機会を広く開くという機運の高まりを歓迎したい。与野党を問わず、幼児教育から高等教育までの無償化、あるいは負担軽減を公約に掲げている。
家庭の所得格差は進学格差を招き、世代を超えた貧困の連鎖をもたらす。機会の不平等は結果として、社会保障コストを押し上げ、貧富の二極化による社会の亀裂を深めかねない。
ただし、自民党希望の党日本維新の会が足並みをそろえるかのように、無償化を憲法改正論に絡めて打ち出しているのは不可解極まりない。もしも、改憲への世論の誘い水として利用しているのなら筋違いも甚だしい。
むしろ、自民中心の戦後政治は、現憲法の要請を蔑(ないがし)ろにしてきたのではなかったか。その不作為をまずは反省してしかるべきだ。
憲法二六条は「すべて国民は、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する」と定めている。子どもにも大人にも、それぞれの心身の発達に見合った学習をする権利を保障している。
その精神は、教育基本法で人種や信条、性別などに加え、経済的地位によっても教育上差別されないと明確にされている。経済力の有無を理由に、学ぶ権利を左右してはならないと戒めているのだ。
教育の無償化、また負担軽減は、現憲法に忠実に従って法律を作り、財源を確保すれば可能だ。家庭の所得に制限を設けたり、小規模にとどまったりしているとはいえ、現に制度化は進んでいる。
制度の拡充には、財源の発掘が欠かせないが、論戦は低調だ。
自民、公明両党は消費税率の10%への引き上げに伴う増収分のうち二兆円を転用すると訴える。しかし、財政健全化が遠のくとの批判が根強くある。
野党は消費税増税には否定的だ。代わりに、希望や維新は行財政や議会の改革などを主張し、立憲民主や共産、社民各党は大企業や富裕層などに的を絞っての再分配を唱える。とはいえ、具体的な道筋はほとんど見えない。
日本の二〇一四年の国内総生産に占める教育機関への公的支出割合は3・2%で、経済協力開発機構加盟の比較できる三十四カ国中最下位だった。平均は4・4%、首位のデンマークは6・3%に上った。幼児教育も最低だった。
教育を公費で幅広く支えることへの異論も聞かれる。その社会的意義をもっと説いてほしい。