(私説・論説室から)「隠れ残業」をどうなくすか - 東京新聞(2017年10月11日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017101102000135.html
https://megalodon.jp/2017-1012-0914-33/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017101102000135.html

広告大手・電通の新入社員、高橋まつりさんの過労自殺で明るみに出た違法残業事件の訴訟は、ずさんな労務管理を会社側が認めた。
裁判は終わったが、残された課題がある。「隠れ残業」をどうなくすかということだ。
電通は終業時刻を本人申告で記録していた。だが、社屋の入退にゲートを通過する際に記録されていた入退時刻と開きがあった。一定の開きがある場合は「社内飲食」など私事による在社だと申告させていた。実際にはこの入退時刻が労働時間、つまりこの時間の差が「隠れ残業」だったといえる。
企業が残業代を払うには、労働時間を正確に把握する必要がある。だが、実は徹底されていない。これが「隠れ残業」を生んでいる面は否めない。
六日に公表された過労死等防止対策白書は、会社側が労働時間を正確に把握している人ほど残業時間が減り、休日の取得が増え、精神状態も良くなると指摘している。
政府はやっと、健康管理を目的に管理職も含む働く人の労働時間の把握を企業に義務付ける規制に乗り出す。ICカードによる入退時刻やパソコンの使用時間などを活用する。
健康を守る重要な労働条件である労働時間の把握が、これまで徹底されていなかったことにあらためて驚く。
過重労働の是正には、まず労働時間の把握徹底と企業はわきまえてほしい。 (鈴木 穣)