(大弦小弦)「日本の大学の研究状況は危機的で… - 沖縄タイムズ(2017年10月12日)


http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/155112
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「日本の大学の研究状況は危機的で、このままいくと10年後、20年後にはノーベル賞受賞者が出なくなる」。ノーベル医学・生理学賞の受賞者、大隅良典さんが昨年、受賞の喜びとともに訴えたのは、日本の研究環境の悪化だった

▼日本人は今年、3年続いた自然科学分野でのノーベル賞受賞を逃した。科学者たちの誇らしげな笑顔を見ることができなかったのは寂しい

▼日本の基礎研究力が衰退しているとの指摘は多い。英国の科学誌ネイチャーは、発表される論文の減少などから「日本の科学技術はここ10年で水準が低下している」と分析。このままでは「科学先進国としての座を追われる」と警鐘を鳴らしている

▼国立大学の運営交付金削減など基礎研究費の不足は深刻で、大学側が長期雇用を短期雇用に切り替えた40歳以下の研究者の数は、2倍以上に膨れ上がったという

▼一方で、大学などを対象にした軍事応用も可能な基礎研究に助成する防衛省の予算は、2016年度の6億円から17年度は以後5年分で110億円と拡大の一途だ

ノーベル賞はダイナマイトを発明したノーベルが平和と人類への貢献を願い、創設された賞。日本の科学者が軍事との距離を縮めつつあることを懸念するとともに、基礎研究力の低下を危惧する。ノーベル賞とは縁のない国になってしまわないか。(知念清張)