(論説室から)ドイツ、投票率は76.2%:私説・論説室から - 東京新聞(2017年10月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017100902000141.html
https://megalodon.jp/2017-1010-1336-54/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017100902000141.html

ドイツの総選挙に注目していたら、あれよあれよという間に衆議院の解散が決まってしまい、十日の公示を迎える。
日独で、ずいぶん勝手が違う。
ドイツでは、不安定な政権がナチスの台頭を許した反省から、首相の解散権を政府提出信任動議を否決された場合に限定。戦後の解散は過去三回にとどまる。今回も有権者は政治の実績をじっくり評価することができた。
二大政党制が確立しているため、選択肢も分かりやすい。今年初めには、メルケル首相のライバルとなる首相候補も決まった。
以来、本格化した選挙戦で、頭を冷やすことができた。
難民受け入れに不安を感じた人も、国の将来は多文化社会にしかないと悟った。
反難民の右派政党は、「ホロコースト犠牲者慰霊碑は恥」などの極右的言動で馬脚を現し、議席は得たが、主流とはなり得ない。
有権者が選択したのは、寛容や人権を主張し続けたメルケル氏の政権だった。
点ではなく線として政治や社会の流れをつかみ、判断できた選挙だったのではないか。
さて、衆院選。あわただしくまとめられた各党の公約に必然性は感じられず、対抗軸も交差する。首相に対抗するリーダーの顔も判然としない。この高い難易度で、ドイツ総選挙の投票率76・2%に、どこまで迫れるのだろうか。 (熊倉逸男)