アメリカと銃 悲劇の傍観、いつまで - 東京新聞(2017年10月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017100502000134.html
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悲劇が繰り返されるのを傍観していいはずはない。米国史上最悪となったラスベガスでの銃乱射事件。米国は銃社会の異常さに気づき、そこから抜け出す一歩を踏み出してほしい。
事件を受けてアメリカン・アウトドア・ブランズ(旧スミス&ウエッソン)などの銃器メーカーの株価は急騰した。こうした事件が起きると、多くの市民が自衛のために銃購入に走るからだ。
オバマ政権時代、銃器業界は活況を呈した。オバマ前大統領が掲げた銃規制強化を警戒する人が購入を急いだからだ。米テレビCNNによると、弾丸は国内生産が追いつかず輸入が激増した。
ところが、トランプ政権誕生で業界は不景気風にさらされている。今年一月に連邦捜査局FBI)が銃購入に当たって身元調査を行った件数は前年同期より20%減った。
規制強化に後ろ向きのトランプ大統領の登場で、懸念が解消されたからだ。
憲法修正第二条は「規律ある民兵は自由な国家の安全に必要であり、国民が武器を保有し携行する権利は、これを侵してはならない」としている。
規制反対派が根拠にするのはこの条項だ。トランプ氏も四月、強力な銃ロビー団体である全米ライフル協会(NRA)の会合に出席して「大統領として市民の武装する権利を決して侵さない」と表明した。
だが、警察組織が整備されていなかった建国当初とは時代が違う。武装の権利はあくまでも自衛のためだ。ラスベガスの事件の容疑者は四十二丁も銃を所持していた。自衛の範囲を超えている。
トランプ氏は「銃の法律のことはそのうち話し合うだろう」と言うだけで、規制強化に動く姿勢は見せていない。
それどころか議会は、NRAが働き掛けているサイレンサー(消音器)購入を簡便にする法案が審議中だ。銃使用者の聴力保護を理由に共和党議員が提案した。
規制派は警告音になり得る銃声が聞こえないと被害が拡大するとして反対している。
米国では三億二千万人余の人口に匹敵する銃が流通する。米疾病対策センターによると、銃によって命を落とす人は年間三万三千人以上。負傷者を加えれば約十万人が銃の犠牲になるという。
この現実を放置してはならない。米国は市民の安全のために銃の規制強化に乗り出すべきだ。