衆院選 自民改憲公約 国民には語らないのか - 朝日新聞(2017年10月3日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13162684.html
http://archive.is/2017.10.03-002110/https://mainichi.jp/articles/20171003/ddm/001/070/150000c

自民党がきのう、衆院選政権公約を発表した。
憲法改正については、5月の憲法記念日に安倍首相が提案した「自衛隊の明記」を盛り込んだ。教育の無償化・充実強化▽緊急事態対応▽参議院の合区解消もあわせた4項目を中心に、「初の憲法改正を目指す」としている。
自衛隊明記を含めた具体的な項目を公約に掲げるのは初めてだ。改憲に意欲的な首相としては、選挙戦で国民に明確に改憲を問うのかと思いきや、実はそうでもない。
首相は衆院解散を表明した記者会見で、改憲には一切ふれなかった。これまでの街頭演説でも改憲は語らず、自ら「国難」と位置づけた北朝鮮情勢への対応や、少子高齢化対策の重要性を主に訴えている。
首相をはじめ自民党の候補者に問う。なぜいま改憲が必要なのか。公約に掲げた以上、国民に持論を語るべきだ。
振り返れば、自民党が圧勝した過去の衆参両院選挙でも首相のふるまいは似ていた。選挙前は「経済優先」を強調し、選挙で得た数の力で「安倍カラー」の政策を強引に進める。
特定秘密保護法、安全保障関連法、「共謀罪」法を成立させたのは、いずれも経済を前面にたてた選挙の後だった。
9条1項、2項を維持し、自衛隊を明記する改憲を2020年までに実現したい。首相が5月に明らかにした構想だ。
党内での議論もないままに、国会の頭越しに自らの首相在任中の改憲に向けて、期限を切って持論を持ち出す――行政府の長としての法(のり)を越えた、首相の暴走だった。
7月の東京都議選自民党が惨敗したのも、そうした首相のおごりが一因ではなかったか。
都議選後、「党に任せる」と改憲論議から一歩引く構えに転じたのは当然だろう。
今回、公約に掲げたことで、選挙後に改憲論議を進める布石を打とうとしたのか。しかし、選挙前は身を低くして、選挙に勝てば「信を得た」と突き進むのは許されない。
衆院選の結果次第では、憲法改正に向けた国会の動きの分水嶺(ぶんすいれい)となる可能性がある。
希望の党」代表の小池百合子東京都知事自衛隊明記には慎重な姿勢だが、憲法改正自体には前向きな立場だ。
言うまでもなく、憲法改正の発議権は国会にある。衆参の憲法審査会での与野党の丁寧な議論の積み上げが大前提だ。選挙結果を問わず、十分な国民的議論も欠かせない。