(余録)歳時記には今ではなぜ俳句の季題なのか… - 毎日新聞(2017年10月3日)

https://mainichi.jp/articles/20171003/ddm/001/070/150000c
http://archive.is/2017.10.03-002110/https://mainichi.jp/articles/20171003/ddm/001/070/150000c

歳時記には今ではなぜ俳句の季題なのか分からぬ言葉もある。春の季語「絵踏(えぶみ)」もその一つだろう。江戸時代にキリシタンでない証しに踏み絵を踏ませたのはご存じの通りだが、それは九州各地の春の行事だった。
長崎では旧暦の正月4日から8日に行われ、最終日の丸山遊郭の絵踏には多くの見物人が詰めかけた。人々はこの日のための豪華な絵踏衣装をまとった遊女らが素足で絵踏をするさまをながめたのだ。
さて衆人が見守る中での“絵踏”を迫られたのは、希望の党へ全員合流するとのふれこみだった民進党のリベラル派の面々である。希望の党小池百合子(こいけ・ゆりこ)代表が安保法制や憲法改正に反対の民進党議員の「排除」を宣告したからだった。
きのうその「排除」の対象と目されてきた枝野幸男(えだの・ゆきお)氏が新党の立憲民主党結成を宣言した。「希望の党とは理念・政策が異なる」とは絵踏を拒んだその言葉で、民進党希望の党合流組と立憲民主党設立組とに分裂することになった。
もともと安全保障や消費増税をめぐる基本政策の違う希望の党民進党をのみこむ話に無理があったこの間のドタバタだ。枝野氏らの分裂は小池氏の思惑通りとの見方もあれば、リベラル派の受け皿ができたと評価する向きもあろう。
同じ日、選挙を仕掛けた自民党は9条改憲の発議を明記した公約を発表した。有権者は日々振り回されているような気分だろうが、まだ決まったことは何一つない。すべての政党、その党首の運命を決めるのは22日に投じる1票である。