(私説・論説室から)最悪事態、避ける議論を - 東京新聞(2017年9月4日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017090402000123.html
https://megalodon.jp/2017-0904-0945-43/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017090402000123.html

北朝鮮は三日、六回目の核実験を行い、先月二十九日には北海道上空を横切る経路で弾道ミサイルを発射した。核兵器とミサイル性能の向上を図る狙いとみられる。
北朝鮮は、米国に攻撃されたイラクリビアの二の舞いにならないよう強力な抑止力を持てば、米国との交渉に臨めるとして核兵器とミサイルの開発を進めてきた。経済制裁を受けようが、やめることはなかった。
一方の米国は核放棄を米朝交渉の条件としたため、北朝鮮に時間を与える結果となり、米国まで届く核搭載の大陸間弾道ミサイルICBM)完成は近づいている。米国が武力行使に踏み切れば、被害を受けるおそれがあるのは日本と韓国である。
防衛省が米国から追加購入を計画するミサイル防衛システムはトランプ米大統領の「米国第一」には貢献するものの、どれほど備えても百発百中は望めない。Jアラートの警報は避難する時間と場所がなければ、「危険を知らせた」という言い訳にしかならない。
二〇一五年七月、核開発を進めるイランは米国、ロシアなど主要六カ国との間で核査察で合意した。イランの核開発能力は維持されたが、戦争という最悪の事態は避けられた。
米国が「北朝鮮を攻撃しない」という保障を与え、北朝鮮が「他国を攻撃しない」と誓うには、米朝交渉に踏み切り、妥協点を探るほかないだろう。 (半田滋)