「保守色強い教科書を」採択目指し政策協定 林・横浜市長と自民党市連:神奈川 - 東京新聞(2017年9月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201709/CK2017090302000128.html
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七月の横浜市長選で三選を果たした林文子市長(71)が、推薦を受けた自民党横浜市連と「保守色の強い教科書が採択されるよう取り組む」という趣旨を含む政策協定を結んでいたことが分かった。市立中学校で使われる社会科教科書の採択に政治が介入する懸念があり、市民団体や専門家から批判の声が上がっている。 (志村彰太)
政策協定は林市長が立候補を表明した六月六日に結ばれた。七分野二十七項目ある合意事項の一項目に教科書採択があり、「子どもたちの郷土愛や豊かな心、道徳心の育成に努め」「あらゆる教科において、新しい教育基本法の精神に基づいた教科書が採択されるよう、引き続き取り組む」などと記されている。市連幹事長の横山正人市議によると、「新しい教育基本法の精神」とは郷土愛や愛国心を指す。
どの教科書を採択するかは各自治体の教育委員会の専権事項で、四年に一回、教育委員が話し合いで決める。首長や地方議員が関与できるのは関連予算や教育委員の人事にとどまり、採択に直接関わることはできない。
にもかかわらず、両者は二〇一三年の前回市長選でも、同じ文言の政策協定を結んでいる。市連政務調査会長の鈴木太郎市議は「市長の政治姿勢を確認するための文言で、形式的なもの」と話す。林市長は八月三日の記者会見で、本紙が「教科書採択に介入するのか」と質問したのに対し、「政策協定は非公開。大事なことは公約に盛り込んでおり、答えることはない」として説明を拒んだ。
市教委は、前回の政策協定が結ばれた二年後の一五年、歴史と公民で、保守的過ぎると一部で指摘されている育鵬社の教科書を採択した。市民団体「横浜教科書採択連絡会」の佐藤満喜子さんは「実際に市長の働き掛けがなくても、政策協定があれば教育委員が意向を忖度(そんたく)する」と指摘している。

◆政治介入 専門家ら懸念
<東京大大学院の村上祐介准教授(教育学)の話> 教育委員会は、政治家など一個人の価値判断による決定を避けるため、合議制になっている。教科書採択も政治的中立性を確保し、不当な支配から離れた環境で進める必要がある。こうした政策協定を結ぶことは、首長の教育への関わり方として望ましくない。