虐殺の歴史、直視して 朝鮮人追悼式 都知事文書なし - 東京新聞(2017年9月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017090102000245.html
https://megalodon.jp/2017-0902-1008-39/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201709/CK2017090102000245.html

一九二三年の関東大震災から九十四年となる一日、震災時に起きた朝鮮人虐殺の犠牲者を追悼する式が、東京都墨田区の都立横網(よこあみ)町公園で営まれた。追悼文の送付を今年からやめるとの小池百合子都知事の判断は変わらず、長年続いてきた知事追悼文の代読が途絶えた。参列者らは「虐殺の歴史にあえて目を背けているように思える」と知事の対応を批判した。
式は日朝協会都連合会などでつくる実行委員会が主催し、午前十一時から始まった。
追悼式実行委員会の宮川泰彦委員長(76)は冒頭「都知事が追悼文をとりやめたことは到底容認できない。流言飛語による虐殺で命を奪われた犠牲者、遺族や関係者に寄り添う姿勢が全く見えない」と強調。
都知事はいま一度立ち止まって、実行委の声や参列者の声、多くの人の声に耳を傾けることを求める。忘却は再び悪夢を呼ぶ危険なものだ」と訴えた。
その後読経に続いて、関東大震災が発生した午前十一時五十八分に参列者が黙とうした後、追悼碑に献花した。
主催者によると、この日は例年の二倍の約五百人が参列。小池都知事の追悼文問題で「逆に朝鮮人虐殺への関心が高まったのではないか」としている。
朝鮮人犠牲者追悼式をめぐっては、都知事と地元の墨田区長の追悼文送付は長年続き、少なくとも二〇〇〇年代から送付が確認されていたが、小池知事のほか、山本亨墨田区長も追悼文送付を取りやめた。
関東大震災では、混乱の中で「朝鮮人が井戸に毒を入れた」などのデマが広がった。あおられた民衆がつくった「自警団」などの手により、多数の朝鮮人や中国人らが虐殺された。政府中央防災会議の報告書は、犠牲者数を、約十万五千人に上る震災死者数の「1〜数%」と推定している。

都知事墨田区長 大法要でも触れず
大震災と東京大空襲などの犠牲者を慰霊する東京都慰霊協会主催の秋季大法要は一日午前十時から、朝鮮人犠牲者追悼式が行われた都立横網町公園内にある都慰霊堂で営まれた。小池百合子知事の追悼の辞が代読されたが、大震災での朝鮮人虐殺について直接の言及はなかった。
大法要には、秋篠宮ご夫妻や遺族ら約六百人が参列。小池知事は都庁での防災訓練などで出席できないため、追悼の辞は安藤立美副知事が代読した。「奪われた多くの尊い命を深く哀悼し、天災の脅威を後の世代に語り継ぐ」などの言葉があったが、朝鮮人虐殺には直接触れなかった。地元の山本亨墨田区長も追悼の辞で朝鮮人虐殺を取り上げなかった。
また同じ公園では朝鮮人虐殺で六千人とされる被害者数に疑問を抱く市民らが午前十一時から式典を開き、「ありもしないことで日本人がおとしめられている」と訴えた。この式典に批判的な市民らが近づいて写真を撮り始めると、主催者側と口論になり、警察官が制止に入る場面もあった。