「熱中症弱者」配慮を また部活の悲劇「教員の認識甘い」 - 東京新聞(2017年8月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017082602000156.html
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部活中の熱中症の悲劇はこれまでにも起きている。「また、同じことが起きた。熱中症に対する教員の認識が甘すぎる」。二〇〇九年、大分の県立高校二年生で剣道部員だった工藤剣太さん=当時(17)=を熱中症で亡くした父、英士(ひでし)さん(52)は二十五日、男子生徒が重体となったニュースをテレビで知り「怒りが湧き上がってきた」と語った。
両親は剣道部の元顧問の賠償責任を問う裁判を起こした。昨年十二月の大分地裁判決によると、剣太さんは気温三〇度の中で練習を続けさせられ、熱中症でフラフラすると、元顧問に「熱中症の症状ではない」などと逆にほおに平手打ちなどを加えられ、意識を失い亡くなった。
母の奈美さん(48)は「息子は顧問に『もう無理です』と訴えたのに聞き入れられなかった。この生徒も息子と同じだったのかと考えると涙が出る」と話す。
英士さんと奈美さんは、部活中に熱中症などで子どもをなくした遺族らでつくる任意団体「エンジェルズアーチ」の立ち上げに加わり、再発防止を訴える活動を続ける。奈美さんは「都教委や学校が関与しない、本当の意味での第三者による調査を直ちに行うべきだ」と訴える。
教育評論家の尾木直樹さんは「機械的に長いランニングを科したのは拷問に近い。命懸けのことをさせる権利は教師側にはない。こうした教員の指導を見過ごした校長や教育委員会の管理監督責任は重い」と批判する。
帝京大医学部付属病院高度救命救急センター長、三宅康史(やすふみ)教授は「障害のある人は、自分から不調を言い出すのが難しい『熱中症弱者』。普通以上に配慮が必要だった」と指摘。一方で「熱中症対策をすれば、障害のある人も安全に運動はできる。三年後の東京パラリンピックに向け、こうした対策も考える必要がある」と話した。 (竹上順子、寺本康弘、服部利崇)