米朝緊迫で前のめり 安倍政権「存立危機事態」を自作自演 - 日刊ゲンダイDIGITAL(2017年8月17日)

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/211628

米国領グアム島周辺に4発の新型弾道ミサイルを撃ち込む案を表明した北朝鮮に対し、「炎と怒りに直面することになる」と怒りをあらわにしているトランプ大統領
金正恩委員長と同じで頭にすぐに血が上るタイプだから、互いに「やんのかぁ」「コラぁ」という田舎の暴走族レベルの“威嚇の応酬”はエスカレートするばかり。そんな米朝に対し、本来は「揃って頭を冷やせ」と諭すべき立場にいるのが日本なのに、積極的に“参戦”する姿勢を見せているから狂っている。
北朝鮮から日本の上空を飛び越えてグアムの方へ(ミサイルが)行く。日本の自衛隊は本当に撃ち落とさなくていいのか。日米同盟の真価が問われている」
15日の「戦没者追悼中央国民集会」で、こんな仰天発言をしていたのが佐藤正久外務副大臣だ。「日本の存立の危機にあたる可能性がないともいえない」と集団的自衛権行使の前提となる「存立危機事態」をチラつかせた小野寺防衛相の仰天解釈を真に受けたようだが、何をトンチンカンなことを言っているのか。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏がこう言う。
「仮に北朝鮮がグアムに向けて弾道ミサイルを発射した場合、地上から600〜700キロの高度で飛んでいく。自衛隊が現在、保有している迎撃ミサイルの高度は500キロ程度ですから、物理的に撃ち落とすのは不可能です」
そもそも北朝鮮は、グアム島周辺の「海域」に向けて弾道ミサイルを撃つ――という計画を発表しただけ。何もグアム島を直接狙ってミサイル攻撃を仕掛けると宣戦布告したワケじゃない。とてもじゃないが、現時点で「存立危機事態」に該当するはずがないだろう。
安倍首相だって、安保法が閣議決定した後の会見で、米国の戦争に日本が巻き込まれる可能性は「絶対にあり得ません」と断言していたではないか。このまま米朝のケンカにクビを突っ込めば、自ら進んで巻き込まれにいくようなもの。「存立危機事態」の自作自演だ。
米朝が軍事衝突となり、日本も参戦すれば犠牲を被るのは国民だ。佐藤副大臣はそんなことはお構いなしで、迎撃が不可能な弾道ミサイルを「撃ち落とさなくていいのか」なんて威勢のいいことを言っているのだ。“ヒゲの隊長”なんて呼ばれているが、戦前、無謀な作戦で多くの犠牲者を出した悪名高き「インパール作戦」を指揮した旧日本軍の牟田口廉也中将とソックリだ。日本が巻き込まれる最悪の事態となったら、安倍首相や佐藤副大臣を真っ先に前線に送り込むべきだ。

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「撃ち落とさなければ、日米同盟どうなる」外務副大臣 - 朝日新聞(2017年8月15日)
http://www.asahi.com/articles/ASK8H62H4K8HUTFK018.html
http://archive.is/2017.08.16-114705/http://www.asahi.com/articles/ASK8H62H4K8HUTFK018.html


佐藤正久・外務副大臣(発言録)
北朝鮮から日本の上空を飛び越えてグアムの方へ(ミサイルが)行く。そういう時、日本の自衛隊は本当に撃ち落とさなくていいのか。日米同盟の真価が問われている。リスクを共有しない同盟はない。もしも(北朝鮮からのミサイルが)日本の上空を飛び越え、(日本が)撃ち落とせるのに撃ち落とさず、グアムに被害が出たら、日米同盟はどうなると思うか。皆さんの商売でも、自分が本当に苦しい時に親友と思った人間が背を向けたら、もはや親友とは言えないかもしれない。まさに今、同盟国・日本の覚悟が問われている。(「英霊にこたえる会」と「日本会議」が主催した「戦没者追悼中央国民集会」のあいさつで)