「加計」「日報」で閉会中審査 最高指揮官の重い責任 - 朝日新聞(2017年7月25日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13053931.html
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稲田防衛相はもちろん、自衛隊の最高指揮官である安倍首相の責任が問われる局面だ。
南スーダン国連平和維持活動に派遣された陸上自衛隊部隊の日報をめぐって、防衛省自衛隊の混乱がやまない。
「廃棄した」とされた日報のデータが陸自に保管されていた事実が、2月中旬の幹部会議で陸自側から稲田氏に報告された可能性が報道で発覚した。
だが、きのうの閉会中審査で問われた稲田氏は「私が報告を受けて隠蔽(いんぺい)を了承するということはない」と否定した。
なぜそう言えるのか。稲田氏は「私は報告を受ければ、必ず公表をすべしという考えだ。私の政治姿勢と真逆(まぎゃく)の隠蔽をするということはない」と述べた。この説明に説得力があると感じる国民がどれほどいようか。
幹部会議の前日、稲田氏は国会で野党から日報データの有無を追及されていた。稲田氏の側から報告を求めることが当たり前ではないか。
それもしていなかったとすれば論外だし、報告を受けていたなら、3月の国会審議で「報告されなかった」と述べていたことが虚偽答弁になる。
報告を受けていたのに、その認識がないとすれば、防衛相としての資質が疑われる。
一方、防衛省自衛隊が稲田氏に報告もせずに非公表を決めていたとすれば、稲田氏に統率力がないことが明白になる。
いずれにしても、文民統制が機能しているとは到底言えない異常事態である。
さらに疑問なのは、首相のどこかひとごとのような態度だ。
陸自に日報データが保管されていたことを、首相はいつ知ったのか。きのう国会でただされた首相は「まだ報告は受けていない」と繰り返した。
確かに、防衛相直轄の防衛監察本部が特別防衛監察を行っている。だが日報データが組織的に隠蔽されていたのではという疑惑は、多くの国民の不信を招いている喫緊のテーマだ。
首相には稲田氏への任命責任のみならず、自衛隊の最高指揮官として、適正な文民統制を取り戻す重大な責任があることを忘れてもらっては困る。
来月早々に予定される内閣改造を待つことなく稲田氏を更迭し、一刻も早く事態を収拾することを首相に求める。
監察を命じた稲田氏自身が疑惑の対象となり、監察の信頼性と実効性が揺らぐなか、国会の使命も重い。稲田氏や黒江哲郎事務次官、岡部俊哉陸上幕僚長ら関係者を招致し、徹底した究明に取り組むべきだ。