ビラ配布解禁 地方議員も政策競おう -朝日新聞(2017年7月6日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13021016.html
https://megalodon.jp/2017-0706-1658-37/www.asahi.com/articles/DA3S13021016.html

東京都議選の選挙運動で、候補者は自分の公約を記した政策ビラを配れなかった。
政党などのビラなら配布できるが、候補者名の入ったものは認められない。告示前には政治活動として顔写真入りのビラを配る事例も目立ったが、告示後は許されない。
まるで政策に背を向けたようなルールは、2019年3月から改善される。都道府県議選と市区議選で候補者の政策ビラを公費でつくり、配れるようにする。そのための公職選挙法の改正が先の国会に議員提案され、全会一致で成立した。
都道府県議選では候補者1人につき1万6千枚、政令指定市議選は8千枚、その他の市議と東京23区議選では4千枚を配れるようになる。
4年前、選挙運動でのインターネット活用が解禁されたのに続き、候補者と有権者の距離を縮める改革として評価する。
選挙中の政策ビラ配布は、自治体の首長選挙では07年から認められているが、議員選挙では見送られてきた。
予算編成権をもつ首長と異なり、個々の議員の政策は実現への道筋が見えにくい。「名前を覚えてもらうのが選挙だ」という風潮も根強くあった。
それが昨年、富山市議会の政務活動費の乱費を機に吹き荒れた地方議会批判で、風向きが変わった。各地の議員が汚名返上に向けて「政策重視」を訴え、ビラ配布の解禁を求めたのだ。
法改正で期待されるのは、選挙戦での政策の比重の増加だ。
候補者名の連呼や握手から、政策の競い合いへ――。地方議員選挙の改革を後押しする原動力につなげてほしい。
各候補はいま以上に政策を具体的に練りあげ、アピールする力量が問われる。それを有権者が厳しく吟味すれば、議員の政策立案能力は上向くはずだ。
政策をつくれない、語れない候補者はしだいに生き残れなくなるだろう。
また、議会の会派が公約を掲げて選挙を戦う「会派マニフェスト」の普及にも生かしたい。岩手県三重県大阪市横浜市、埼玉県越谷市などでおこなわれてきた。
ビラに会派の公約と候補者名を並べられるようになることで、政策と候補者の選択肢をより明確に示せる。
改正法で残念なのは、町村議員選が対象ではないことだ。
議員のなり手が不足しがちな過疎地の町村こそ、議員選挙の公営化が求められる。その一環として、公費によるビラ配布を認めていくべきだ。