臨時国会の召集に「応じない」内閣 憲法違反では? (渡辺一樹さん) - BuzzFeed(2017年7月1日)

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憲法53条を見てみると……。
加計学園問題をめぐって野党側が求める臨時国会の召集に、安倍内閣は「応じない方針」だという。憲法には、一定割合の議員が要求した場合、「内閣は、その召集を決定しなければならない」と書いてある。いったいどうなっているのか?
臨時国会の召集ルールについて、憲法53条には、次のように書かれている。

いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。
今回、野党側の要求は、この条件を満たしている。

ところが、時事通信によると、内閣は召集に「応じない方針」だという。菅義偉官房長官は「政府は召集義務を負うが、憲法上期日の規定はない」と記者会見で語った。
義務があるのに、「応じない」で問題ないのだろうか?
小口幸人弁護士が解説する。
憲法53条は、『内閣は、召集を決定しなければならない』となっています。要求があった以上、内閣にそれを拒否する裁量はありません」
ただ、そのルールには期限がない。
憲法のルールにはxx日以内にしなければならない、などと期限が定められているものもあります。一方で、憲法53条のように期限が定められていないものもあります。しかし、期限がないからといって、無視したりあえて遅らせて良いわけではありません」
憲法学者芦部信喜の『憲法』にも、不当な延期はダメと書いてある。

臨時会の召集要求があった場合、内閣が議案の準備が整っていないとか、その他政治的な理由で召集を不当に延期することは、制度の趣旨に反するであろう。

小口弁護士は指摘する。
「実は、要求があったのに臨時国会が召集されなかったのは、今回が初めてではありません。近いところでは一昨年、安保法制が話し合われた第189回国会の後もそうでした」
当時、野党側は「安保法制の採決は無効だ」として、説明と廃案とを求めて臨時国会の召集を要求した。ところが安倍政権は、外交日程の都合などを理由に、臨時国会を召集しなかった。野党からは「違憲だ」という批判もあったが、政治はそのまま進んだ。
憲法のルールが守られなかったとき、ペナルティはないのだろうか?
憲法では、大臣も国会議員も、すべての公務員は憲法を尊重し、擁護する義務があるとされています。ただ、憲法には、破ったときの罰則は特に定められていません。憲法では、ペナルティは定められていないのです。このことについて、よく『憲法には後ろ盾がない』という言い方がされます」
刑法に違反した場合、裁判で有罪になれば刑罰が科される。
民事裁判でも、判決文に基づいて財産の差し押さえが行われることもある。
ルールは、こうした強制力があるから守られるという側面がある。
ところが憲法には、このような「後ろ盾」がない。
憲法を守らせる仕組みはどうなっているのか?
「突き詰めていうと、憲法に反する行為を裁かなければいけないのは、主権者国民です。もし、国会議員が憲法に書いてあることを無視しているのに、国民がその状態を支持し続けるなら、憲法はただの紙っぺらになってしまいます」
裁判所は、何とかしてくれないのだろうか?
「日本の裁判所は、『法律上の争訟』しか扱わないという姿勢をとっています。これは、できるだけシンプルに言うと、自分の権利・利益が侵害されたときにしか、裁判所は扱ってくれないということです。今回のようなケースについて、国民が裁判を起こすのは簡単ではありません。それに、もし最高裁が『内閣は召集決定しなければならない』という当然の判決を出したとしても、無視される可能性があります。憲法を無視する人たちが、最高裁判決に従うとは限りません」
こんなとき、国民はどうすればいいのか?
小口弁護士は「意思を示すしかない」と話す。
「前回と違い今回は、次の通常国会までに間があいていますから、臨時国会を召集しない理由は見当たりません。もし国民がこれを見過ごせば、『憲法を守らなくてもいい』というメッセージとして伝わりかねません」
「国民の声が大きくなれば、すぐにでも召集されることになるでしょう。政治的な意思を表明する方法は、選挙だけではありません。マスコミの世論調査に答えたり、SNSで発言したりと、今はいろいろなやり方があるのではないでしょうか」