韓国の脱原発 福島が教えてくれた - 東京新聞(2017年6月24日)

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隣国の脱原発。福島の教えに従って原発の寿命を守って漸次、再生可能エネルギーへの転換を図りつつ、廃炉ビジネスなどで市場をリード−。容易ではないだろうが、堅実な前進を望みたい。
文在寅(ムンジェイン)大統領の「脱原発宣言」は、釜山市郊外にある古里(コリ)原発1号機の「永久停止宣言式」で飛び出した。韓国初の原発運転終了だった。
古里1号は、一九七八年に運転を開始した韓国で最も古い商業用原子炉だ。かつて「漢江の奇跡」といわれた経済発展の象徴的な存在だった。時代が変わる。
韓国国内で稼働中の原発は二十四基になった。総発電量に占める割合は約30%と、まだ高い。
朴槿恵・前政権は、原発の増設と海外輸出に積極的で、二〇二九年までに三十六基に増やす計画だった。
これに対して文大統領は「(原発の割合を)三〇年までに18%に引き下げる」と、脱原発依存を掲げて五月の選挙を勝ち抜いた。
大統領は「進行中の新規建設計画はすべて白紙化し、稼働中の原発も設計寿命を超える延長はしない」と明言。五年前に三十年の設計寿命を終えたあと、十年の運転延長に入った慶州市の月城(ウォルソン)原発1号機に関しても「できるだけ早く閉鎖する」と述べている。
風力や太陽光など再生可能エネルギーが占める割合は、現在5%程度だが、三〇年までには20%台に引き上げる方針で、脱原子力、脱石炭の工程表の提示を急ぐという。廃炉産業で世界の先頭に立ちたい“野心”もある。
文大統領は「福島の事故が、原発が安全でも安くもないことを明白に示している」と語っている。昨年九月、原発のある慶州も強い地震に襲われた。人口密集地の近くに多いのが、韓国の原発立地の特徴だ。
釜山市長も新設中止に賛意を示している。
台湾でも一足早く、福島の教訓に従って、新政権が脱原発にスイッチを切り替えた。未来を見通す政治家ならば、福島の教訓→生命最優先→脱原発依存→再生エネへの転換という大きな流れに乗る方が、むしろ自然なのではないか。
ところが福島のあるこの国が、教訓を生かせず、流れに乗りきれず、次に原子力規制委員になる人が「寿命延長」を公然と支持するような逆行をほのめかすのは、なぜだろう。隣国の変化を見守りながら、よく考えてみたいと思う。