内閣支持率急落 国民の怒りを侮るな - 東京新聞(2017年6月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017062002000137.html
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内閣支持率が急落した。「共謀罪」法の成立を急いだ強引な国会運営や、学校法人「森友」「加計」両学園の問題に対する国民の怒りの表れにほかならない。安倍政権は、侮ってはいけない。
安倍晋三首相の記者会見で表明した「率直な反省」が、内閣支持率急落の深刻さを物語る。
通常国会閉会にあたって報道各社が行った世論調査の結果が出そろった。共同通信社の全国電世論調査では、内閣支持率は44・9%と、五月の前回に比べて10・5ポイントの急落である。
調査主体にかかわらず、傾向に変わりはない。政権不信がより高まったとみて間違いないだろう。
内閣支持率が、なぜここに来て急落したのか。その理由の一つは強引な国会運営である。
安倍政権がテロ対策に必要と主張した改正組織犯罪処罰法は「共謀罪」の趣旨を盛り込み、一般市民の内心に踏み込んで処罰する危うい内容と指摘される。
懸念が払拭(ふっしょく)されていないにもかかわらず与党は参院法務委員会での審議を打ち切り、本会議で直接採決する「中間報告」というやり方で成立を強行した。
共同通信の調査では、委員会採決の省略について67・7%が「よくなかった」と答えた。
首相は会見で「国会での審議、指摘を踏まえながら適正に運用する」と述べたが、強引な国会運営を反省するのはもちろん、改正法の危険性を深く認識して、審議をやり直すべきではないか。
もう一つの理由は「森友」への国有地払い下げや「加計」の獣医学部新設計画で、公平・公正であるべき行政判断が「首相の意向」や忖度(そんたく)によって歪(ゆが)められたとの疑いが払拭されないことである。
「加計」をめぐる政府の説明には73・8%が「納得できない」と答え、「森友」の問題でも、安倍政権に「問題があると思う」は57・1%と半数を超えた。
首相は会見で「真摯(しんし)に説明責任を果たしていく。国民から信頼が得られるよう丁寧に説明する努力を積み重ねていく」と述べたが、首相と近しい人ばかりが優遇される政権の在り方への不信の根深さを、世論調査は物語る。
安倍内閣を支持する理由で最も多いのは「ほかに適当な人がいない」の46・1%だ。
なお40%を超える支持率も内実は消極的理由にすぎない。国会や政権の運営を強引に進めても、これからも国民が大目に見てくれると思ったら見当違い、である。