ホームレス法 官民協働の支援さらに - 東京新聞(2017年6月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017061702000139.html
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国や自治体がホームレスの就労や住宅確保を支援することなどを定めた法律の十年延長が決まった。路上で孤立している人々の窮状を見逃さず、民間の力を借りながら、生活再建を応援したい。
ホームレス自立支援法は二〇〇二年に十年の時限立法として施行され、五年の延長を経て今年八月に期限が迫っていたが、NPO法人「ホームレス支援全国ネットワーク」などが延長を要請。今国会で二七年まで延長する改正案が全会一致で可決、成立した。
支援法は国に対してホームレス問題の可視化を求め、公園や河川敷、駅構内などで起居する人の実態調査を義務づける。当事者が働く場や住まいを得て自立できるよう、路上生活者支援に取り組んできた民間団体に財政的な援助をすることなどを定めている。
自立に向かう責任を当事者だけに負わせない。官民が協力しながら支援に取り組む根拠となる法が維持された意義は大きい。
就職活動する人に期間限定で住まいを提供する自立支援センター事業やシェルター事業、巡回相談などを進めてきた結果、ホームレスは減少傾向にある。〇三年の国の初調査では二万五千二百九十六人だったが、今年の調査では五千五百三十四人。東京都では、自立支援センター事業の利用者のうち就労者は半数に上る。
一方で、ホームレスの数は大幅に減っても、路上で過酷な生活を送っている人は依然として大勢いる。高齢化が進み、路上生活が十年以上に及ぶ人が少なくない。ほとんどの人が貧困は衣食住だけでなく、身寄りがいない、心身に障害があっても医療や福祉の支援を受けられていないなど、問題を複合的に抱える。より困難な人が取り残されているともいえる。
新たな問題も見えている。支援法はホームレスの定義を「屋外で生活する人」に限っているため、住まいのない困窮者の全体に対応できていない。
低賃金の非正規雇用が四割を占めるようになり、若年層でその割合はさらに高い。アパートを借りられるだけの収入を得られず、ネットカフェや友人宅を転々としたり、違法まがいの脱法ハウスで生活する人もいる。
公的な支援を必要とする人は法の枠外に広がっている。住まいは生活を支える基盤である。ホームレス問題を広げないために、政府が低家賃の公営住宅をもっと増やしていくなど、取り組むべき方策はいくつもあるはずだ。