(余録)連続ドラマのシーズンエンド… - 毎日新聞(2017年6月17日)

https://mainichi.jp/articles/20170617/ddm/001/070/152000c
http://archive.is/2017.06.17-020023/https://mainichi.jp/articles/20170617/ddm/001/070/152000c

連続ドラマのシーズンエンド、物語途中で死んだはずの人物が突然銃を持って主人公たちの前に現れる。画面は暗転、2発の銃声が響き「つづく」の文字。米国ドラマの似た場面が思い浮かぶ方もおられよう。
次シーズンへ視聴者の興味をつなぐこのようなエンディングは「クリフハンガー」と呼ばれる。崖(がけ)で宙づりとなった状態を意味しているが、米国の連ドラであぜんとさせられるのは、そのまま続編が作られないことがよくあるからだ。
ドラマ打ち切りの理由は視聴率や制作費の事情、俳優や放送局の都合などなどである。唯一かえりみられないのは視聴者の不満だろう。ただし宙づりで放置される視聴者も慣れたもので、後は自分で想像すればいいということらしい。
こちらは文部科学省の内部文書の記述と、内閣府の調査の食い違いが判明した加計(かけ)学園の獣医学部新設問題である。新たに首相官邸の指示を示すメールも明るみに出て、さあ国会での真相究明は佳(か)境(きょう)へ−−と思ったら会期終了という。
きのうの集中審議では官邸の不当介入を追及する野党に対し、首相は手続きは適正との弁明に努めた。ならばいよいよ注目の前文科事務次官はじめ関係者の議会証言で事実経過が判明するのかどうかという場面でのクリフハンガーだ。
政府・与党はこのままドラマを打ち切って素知(そし)らぬ顔をするつもりらしいが、国民が米国のテレビ視聴者のようにおとなしくしているとは限らない。崖っぷちで宙づりにされたのはこの国の民主主義である。