(筆洗)絶えず監視されている状況はいかにも窮屈で息苦しい - 東京新聞(2017年6月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017060802000143.html
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<おっかな(大塚)びっくり 度胸を定め 彼女に会いに行けぶくろ(池袋) 行けば男がめじろ(目白)押し>…。オールド演芸ファンにはおなじみだろう。四代目柳亭痴楽(一九二一〜一九九三年)の「恋の山手線」
山手線の駅名をシャレ言葉に織り込んだ七五調の名調子は、寄席をおおいにわかせたそうな。小林旭さんが歌った同名ヒット曲もこれが下敷きだと聞く。
名調子をもう少し。<腹(原)宿減ったと渋や(谷)顔><彼女に会えればえびす顔>。その話に世間の「渋谷顔」と「恵比寿顔」の両方が同時に浮かぶ。JR東日本は山手線の全車両の客室内に防犯カメラを二〇一八年の春から設置するという。
痴漢など車内での犯罪や迷惑行為、テロ防止のために防犯カメラが必要とは社長の弁。確かに車内に防犯カメラがあれば、破廉恥漢も警戒し、愚かな真似(まね)を控えよう。その点は「恵比寿顔」である。
あらぬ疑いをかけられた場合、カメラの録画映像で黒白つけることも可能だろう。いつ災難がと車内では絶えず両手でつり革を握りしめている方にはカメラはひとつの安心材料にもなるやもしれぬ。
「渋谷顔」とはもちろん、プライバシーの問題。何をするわけではないにせよ、絶えず監視されている状況はいかにも窮屈で息苦しい。防犯カメラ無しで安全を保てない時代。それを新橋する。ご無礼、心配する。