権力のいじめ 許す空気怖い 女性蔑視やじ 塩村都議と考える - 東京新聞(2017年6月8日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017060802000148.html
http://megalodon.jp/2017-0608-1028-50/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017060802000148.html

現職の都議にとって四年間の締めくくりとなる東京都議会は七日に閉会した。この四年間では、塩村文夏(あやか)都議(38)が二〇一四年六月の本会議で、妊娠、出産期の女性への支援策を質問した際、「子どもを産めないのか」などのやじを受け、国内外に波紋を広げた。やじ問題の教訓とは何か。七月二日投開票の都議選を前に、衆院選出馬のため今期で都議会を去る塩村さんとあらためて考えた。 (木原育子)
私も選挙で選ばれた一人なのに、人格を攻撃するようなやじを飛ばされ、笑われた。私に託してくれた有権者の思いを踏みにじった。こういう人たちが議員になっているんだと、悔しく、悲しかった。
塩村さんは、やじ問題をこう振り返る。都議会の定数一二七のうち女性は二十五人。女性議員の占める割合は19・7%で、一五年の総務省調査では都道府県議会のうち京都に続き二番目の高さだ。そんな首都の議会で、やじは複数の議員から飛んだ。「子どもを産めないのか」「早く結婚しろ」−。
都議会には、強さを誇示するような文化があると感じた。やじはその分かりやすい一つで、弱い者に向けられやすいと思った。
やじ問題は、塩村さんが簡易投稿サイトのツイッターを使ってつぶやいたことで、三日間で約三万人が転載し国内外に波紋を広げた。当時の自民党幹事長が非を認め、鈴木章浩都議が名乗り出て謝罪した。本紙の取材に「私だけが言ったわけではなく一部を切り取られたところもあったが、ひとつの戒め。仕事柄、誤解のないように言葉には気を付けないといけない。品性は大事ですから」と話す。
あの時、質問が終わっても、ずっと議場に笑いが続いていた。笑っていた人はその後、誰も名乗り出ずに沈黙した。それが許され、忘れられていく空気が怖かった。政策的で建設的なやじを否定するつもりはない。だが、権力を誇示する中で強い側が発するやじは議会の華ではない。それは、いじめのツール(道具)にすぎない。
都議選では、議会改革も争点の一つになる。
女性目線の施策が進まない理由は、都議会に興味を持たれなかったから。良識的な都議会にするには、都民に見られ続けるという「監視の目」が欠かせないと思う。