加計学園問題 説明責任は首相にある - 朝日新聞(2017年6月7日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12975696.html?iref=comtop_shasetsu_01
https://megalodon.jp/2017-0607-0914-43/www.asahi.com/articles/DA3S12975696.html?iref=comtop_shasetsu_01

加計(かけ)学園の獣医学部新設の舞台になっている国家戦略特区は、首相官邸のサイトで「総理・内閣主導の枠組み」と説明されている。一方、安倍首相は国会で、特区の仕組みについて「私の意向というのは入りようがない」と答弁した。

普通は両立しない主張だ。

仕組みを確認する。

この制度を使って、どの地域でどんな規制改革をするか。その計画は、首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議で議論し、それを受けて首相が認定する。首相は、国際会議で「国家戦略特区では、岩盤規制といえども、私の『ドリル』から無傷ではいられません」といった発言もしている。
「私のドリル」だが、「私の意向」ではない。あえて解釈すれば、前者は規制緩和の大枠、後者は具体的な事業者選定について、と言いたいのだろうか。
今回の獣医学部新設では、候補を事実上、加計学園だけに絞り込む条件がついた。道筋を付けたのは、昨年11月9日の諮問会議での決定だ。
首相は国会で「(諮問会議の)民間議員の皆さんは大変怒っている。正々堂々たる一点の曇りもない議論をしてきたのに、総理の意向で決めたかのごとく言われるのは憤懣(ふんまん)やるかたない、と」とも述べた。
間議員の支持もあっただろう。だが事実上、他の候補を退ける「広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限り」との条件は、首相や官房長官内閣府の担当閣僚らも加わった諮問会議名での提案だった。
議事要旨によると、特区の山本担当相は「重点課題について、直ちに実現に向けた措置を行うよう総理からご指示をいただいた」「関係各省と合意が得られたものをとりまとめた」などと背景を説明している。
こうした合意形成が政府内でどう行われたのか。その舞台裏をうかがわせるのが、文部科学省内閣府から「官邸の最高レベルが言っている」と言われたと記録された文書だ。文科省の前次官に続き現役職員も「文書は省内で共有されていた」と朝日新聞に証言した。
事業者の具体的な絞り込みについて、首相や官邸側の意向が実際に働いたかどうかは、現時点では不明だ。実態を明らかにするために、官邸と各省での決定過程の徹底検証が不可欠だ。
首相主導の特区の事業者に、首相の「腹心の友」が理事長である加計学園が決まった。それだけに、公平性や透明性について、首相は一段と重い説明責任を負っている。