いじめ自殺 教委不信、深刻な危機 - 朝日新聞(2017年6月6日)

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学校や教育行政への信頼が、深刻な危機に直面している。
いじめとの関連が疑われる生徒の自殺について、教育委員会や教委が設けた第三者機関の調査に遺族が不信を抱き、再調査やメンバー交代などを求める。そんな例が仙台、青森、茨城・取手などで相次いでいる。
現にあるルールへの理解を欠き、事実に向きあおうとしない教委の態度が浮かびあがる。
大津市で起きたいじめ自殺の教訓から、4年前にいじめ防止対策推進法が生まれた。
法律は、いじめの「疑い」があれば「重大事態」ととらえ、特別な組織を設けて調査をし、被害者に情報提供するよう定めている。いじめの確証がなくても、可能性を前提にまず動くことを求めているのだ。
その認識はどこまで浸透しているか。取手市教委は第三者機関を設けるのと同時に、「重大事態ではない」という不可解な議決をしている。調査の起点で遺族の不信を招いた。
残された家族が何より望むのは「何があったのか」を知ることだ。事実の解明なしには、加害者の反省も、校内や地域の動揺の収拾も、再発防止もありえない。むろん被害者側が納得できるはずもない。
一連の問題事例では、事実の追究が甘かったことも、学校や教委に都合よく事を済ませようとしているとの疑いを招いた。教委の公正・中立が疑われることなく適切な調査が行われるよう、被害者側にその手順や進み具合を説明し、理解を得ながら進めることが肝要だ。
スピードも求められる。解明が中途半端に終わる原因に、全校アンケートなどの時期が遅いことが指摘される。いじめ防止に取り組むNPOは、うわさや報道に影響されて記憶が塗り替わらないよう、「発生・発覚から3日以内」を提唱する。
この時期は学校側も当面の対応で手いっぱいだろうが、文部科学省が3月に定めたガイドラインは、重大事態の報告があれば、市教委などから職員やスクールカウンセラーを派遣できると書いている。支援の用意はある。校長ら管理職は初動対応の重要性を胸に刻んでほしい。
いじめ自殺の多くは、危険の兆候がありながら、共有されず見逃された結果起きている。
生徒や保護者が相談しやすい環境作りが必要だ。校外に相談窓口や子どもの居場所を設け、学校や教委と連携していくような仕組みを考えられないか。
悲しい事件を繰り返さないよう、生徒会や保護者の会合でも話し合いを深めてもらいたい。