いま読む日本国憲法(48)第79条 最高裁裁判官 国民が審査 - 東京新聞(2017年6月5日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017060502000112.html
https://megalodon.jp/2017-0605-1658-38/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/imayomu/list/CK2017060502000112.html

最高裁判所の裁判官について定めた条文です。最も議論となっているのが二項の国民審査制度です。
国民審査とは、内閣が指名・任命する司法のトップメンバーが適切な人材かどうか、国民が判断する仕組みです。具体的には、衆院選の投票に合わせて実施します。有権者は、辞めさせたい裁判官の欄に「×」を付けて投票し、「×」が投票総数の半数を超えた裁判官は罷免されます。この制度で罷免された例はありません。「×」を付けずに投票する人が多いからです。
自民党改憲草案は、衆院選の際に国民審査を行うという規定を削り、審査方法は憲法ではなく法律で定めるとしました。草案Q&Aは「(現行)制度が形骸化しているという批判がある」と説明しています。
現行の二項は、一人の最高裁裁判官が十年ごとに国民審査を受けることも定めています。法律にした場合、同様の仕組みを導入しないと、問題のある裁判官を辞めさせられなくなるリスクがあると言えます。
六項は、下級裁判所の裁判官について定めた八〇条の二項と合わせ、裁判官の給与が在任中減額できないと規定しています。「司法の独立」を裁判官の待遇面から支えるためです。
自民党改憲草案は、裁判官の給与も一般の公務員給与の引き下げに合わせて減額できる規定を加えています。デフレや懲戒の場合に対応できないのは問題があるという理由です。

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憲法の主な条文の解説を随時掲載しています。

自民党改憲草案の関連表記(抜粋、(1)(4)は略)

(2)最高裁判所の裁判官は、その任命後、法律の定めるところにより、国民の審査を受けなければならない。

(3)前項の審査において罷免すべきとされた裁判官は、罷免される。

(5)最高裁判所の裁判官は、全て定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、分限又は懲戒による場合及び一般の公務員の例による場合を除き、減額できない。