減らない若年者の自殺 孤立を防ぐ対策が大事だ - 毎日新聞(2017年6月4日)

https://mainichi.jp/articles/20170604/ddm/005/070/003000c
http://archive.is/2017.06.04-013207/https://mainichi.jp/articles/20170604/ddm/005/070/003000c

日本の自殺者の数は年々減少しているが、世界各国の中では依然として高い水準にある。特に若年層は高止まりしたままだ。
どうして子供や若者は自ら命を絶つのか。その原因を詳しく分析し、若年層に重点を置いた対策を講じる必要がある。
政府が閣議決定した自殺対策白書によると、日本の自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は世界で6番目に高く、女性だけだと3番目。主要7カ国で10位以内に入ったのは日本だけだ。
日本の自殺者数は2003年の3万4427人をピークに顕著な減少傾向が続いており、16年は2万1897人になった。だが、若年層だけは減少の兆しが見られない。
5歳単位での統計を見ると、15〜39歳の死因はどの年代も自殺が最も多く、15〜34歳の自殺死亡率は事故による死亡率の2・6倍に上る。主要7カ国で自殺が事故を上回るのは日本だけだ。
自殺の背景には、長時間労働による過労、生活困窮、育児や介護疲れ、孤立などが複雑に絡まっている。政府や自治体は自殺対策として相談窓口の整備に努めてきた。
子供の場合はいじめや友人関係の悩み、学業不振、家庭内の問題などが指摘される。だが、一般の相談窓口になかなかつながらず、周囲が予兆に気づかないケースが多い。
政府は、子供自らが周囲に悩みを打ち明けやすい環境を作ること、学校における「SOSの出し方教育」を進めていくことを検討している。そのためには、担任教師だけでなくスクールカウンセラーなどの専門職をもっと配置する必要がある。
周囲の大人に対する教育も重要だ。子供が小さなSOSを出しても、学校関係者や家族がそれに気づくことができる感性や知識を身につけていなければ生かされないだろう。
また、高校中退者や自宅に引きこもっている若者は、教育と福祉のはざまで困窮状態にある人が多い。孤立する若者をどう支援につなげるかを考えないといけない。
先進国の間では子供の自殺について政府主導の調査研究で未然防止につなげようという動きがある。日本も重要な国政の課題と認識し、全力で取り組むべきだ。