(筆洗)政府の説明は「そんな文書は存在しない」のみ。 - 東京新聞(2017年5月22日)


http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017052202000120.html
https://megalodon.jp/2017-0522-2100-45/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017052202000120.html

怪談の季節にはちょっと早いが、米国での調査によると、米国人で幽霊の存在を信じる人は約三割だそうだ。英国でも同じぐらい。日本人の調査結果はなかったが、幽霊とのなじみの深さを思えばもう少し高いかもしれぬ。
科学的には幽霊存在説は分が悪いそうだ。トーストパンに浮かび上がるキリストの顔などの話を聞いたことがあるだろうか。人間の脳は何を見ても、人の顔を自然と思い浮かべてしまう傾向があるようで、これが幽霊の正体という実験結果もある。死後、生前の記憶を残したまま、地上を漂い続けるほどのエネルギーを確保し続けるのは不可能という幽霊不在論もある。いずれもなるほどと理解できる。
それは本当に幽霊ではなく、政府のいう「枯れ尾花」なのか。学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡る一連の「幽霊」である。
学校法人の理事長は首相の友人。学部の新設は「総理の意向」とする内部文書も明るみに出ている。
国民からすれば雨がシトシト降る、丑(うし)三つ時に墓地を歩くほどに、「何か」を感じる状況だが、政府の説明は「そんな文書は存在しない」のみ。それは説明や証明とはほど遠く、「幽霊はいない」と根拠もなく力説しているにすぎない。
不十分な調査で幕引きを図る動きもある。かくて、「幽霊」は首相官邸の周辺をさまよい続ける。それは政府の望むところでもあるまいに。