(筆洗)ディランさんの歌が、痛烈に響く - 東京新聞(2017年5月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017051302000130.html
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♪戦争の親玉どもよ
銃を造る者たちよ
死の飛行機を造る者たちよ
強力な爆弾を造る者たちよ…

と、ギターをかき鳴らしながら、ボブ・ディランさんは歌った。「戦争の親玉」と名指しされたのは、ベトナム戦争などで潤っていた軍需産業のことだ。

安心してこの世に
子供たちを産み落とせない恐怖を
未だ生まれず名もつけられていない
子供たちを脅かしている
(『ボブ・ディラン全詩集』中川五郎訳)

戦争が終わっても、その恐怖は次世代の子どもたちを脅し続ける。そんな兵器の一つが、一発の親爆弾から数百の子爆弾が拡散するクラスター爆弾だ。
ベトナム戦争時に米軍がクラスター爆弾を雨と降らせたラオスでは八千万発もが不発弾となり、二十一世紀になってからも子どもらの命を奪い続けた。「未来を殺し続ける兵器」である。
製造・使用を禁止する条約が七年前に発効し、欧州などでは製造企業への投融資を禁ずる動きも広がった。なのに、日本の公的年金を運用する組織は、この爆弾を製造する企業の株を大量に保有しているという。
老後の安心のための私たちの大切なお金を「戦争の親玉」に使わせていいのか。

おまえは人に銃を持たせて
…自分は安全な場所に引っ込んで見物しているだけ
その間にも死者の数はうなぎ登りに増えて行く…

というディランさんの歌が、痛烈に響く。