性的少数者 人権守る法整備急ごう - 東京新聞(2017年5月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017051102000142.html
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同性愛や性同一性障害などの性的少数者(LGBT)が社会のさまざまな場面で差別に遭っている。性のあり方を理由にした人権侵害を禁じる仕組みが必要だ。当事者の声を聴き、法制化を急ぎたい。
「LGBT」という言葉がニュースなどで知られるようになった。
同性カップルに公的証明を発行する条例が二年前、東京都渋谷区でつくられたことなどがきっかけで、同様の条例は世田谷区や三重県伊賀市那覇市などでもつくられた。
恋愛対象となる性は何か(性的指向)、自分の心の性(性自認)は人によって違う。
性のあり方は多様だという視点を取り入れ、施策に取り組む自治体は徐々に増えている。文京区は当事者が行政窓口や学校で差別的言動を受けないようにするため区職員や教員用の対応指針を作った。同性パートナーを持つ社員に結婚休暇や介護休暇の取得を認める企業もあらわれ始めた。
しかし、問題は命や尊厳にかかわる。自治体や企業の努力だけでは改善しきれない。やはり差別を禁じる理念を持った法が必要だ。
国連は二〇一一年に性的指向による差別問題に取り組む決議を採択し、五輪憲章にも一四年に「性的指向による差別禁止」が明記された。先進国では法整備が進んだが、日本ではまだだ。
二〇年の東京五輪開催を見据え、性的少数者の権利を考える超党派の国会議員連盟が一昨年結成された。当事者への理解促進にとどめるとの意見もあり、与野党で意見が対立、議論が止まっている。差別解消に実効性ある法案を早急にまとめてほしい。
民間団体が実施した調査では性的少数者の約七割が学校でいじめを受けており、三割が自殺を考えたことがあった。都内大学で同性愛者の学生が同級生に同性愛者であるとソーシャルメディアで暴露された後に自殺したのはあまりに痛ましい。
当事者の多くは小中学生の頃に自分の性について気づいているが、性的少数者のことは学校でも教えられない。「思春期には異性を意識するようになる」という教え方では不十分で、むしろ誤りだ。偏った教え方は当事者を疎外する。
当事者の電話相談を受ける「共生社会をつくるセクシュアル・マイノリティ支援全国ネットワーク」の原ミナ汰さんは「相談の八割は個人の問題でなく、人間関係によるものだ」と分析する。問題から目をそらしてはいけない。