(筆洗)百日間が「ハネムーン」 - 東京新聞(2017年4月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017043002000135.html
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米映画「卒業」の封切りは一九六七年というから今年で五十年である。サイモンとガーファンクルの主題歌を思い出す方もいるだろう。
結婚式当日の教会から花嫁を連れ去るダスティン・ホフマン。間違った結婚であることに気づき、その手を取ってともに逃げるウエディングドレスのキャサリン・ロス。有名なラストシーンである。
バスに飛び乗った二人は逃げ切ったことにはしゃぐ。だが、やがてその笑い顔が消えていく。言葉もなく、正面をじっと見ている。二人の表情に浮かぶのは、これからどうなるのかという不安と、おそれである。
あの場面が浮かんだのは大統領就任からの百日間が「ハネムーン」と呼ばれるせいか。トランプ米大統領が就任から百日目を迎えた。トランプ政権には当てはまらぬようだが、この期間、議会、メディアも批判を手控える傾向があるため「ハネムーン」という。
あの映画ではないが、最初は威勢の良いスローガンを口にしていた大統領もこの百日間で実際の政治の難しさを痛感し、とまどっているのではないか。支持率は低迷。百日以内に実現すると宣言した公約の大半は日の目をみない。シリアへのミサイル攻撃には驚いたが、その「力による平和」とて先行きは見えない。
ネムーンは終わった。それでもバスは走る。これからどうなるのか。不安を抱えているのは乗客の方である。