「共謀罪」対象277犯罪の内訳判明 分類変え「テロ」最多に 資料入手 - 東京新聞(2017年4月28日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017042802000129.html
http://megalodon.jp/2017-0428-1119-37/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017042802000129.html


犯罪に合意しただけで処罰する「共謀罪」の二百七十七の対象犯罪について、政府が当初案から分類方法を変え、「テロの実行」が最多になったことが、本紙が入手した政府作成資料で分かった。当初は組織的犯罪集団の「その他資金源」に関する犯罪が最多だったが、暴行や脅迫により人をさらう略取・誘拐などの分類を「テロの実行」に変更。国会に提出された組織犯罪処罰法改正案では「テロの実行」が最多となり、「テロ対策」が強調された。 (山田祐一郎、大杉はるか)
政府は対象犯罪を「テロの実行」「薬物」「人身に関する搾取」「その他資金源」「司法妨害」の五つに分類。本紙は対象犯罪が六百七十六だった今年一月時点と、現在の二百七十七の対象犯罪の全罪名と分類を入手した。
現在の対象犯罪が一月時点ではどう分類されていたかを調べたところ、一番多いのは「その他資金源」の百五で、「テロの実行」はそれに次ぐ九十九だった。現在は「テロの実行」が百十に増え、「その他資金源」の百一を上回って最多となっている。
一月時点では「未成年者略取及び誘拐」「営利目的等略取及び誘拐」など八つの罪は「人身に関する搾取」に関する犯罪に、「強盗」「組織的威力業務妨害」「組織的強要」の三つの罪は「その他の資金源」にそれぞれ分類。現在審議中の共謀罪法案では、この十一の罪の分類を「テロの実行」に変えたことで「テロの実行」が最多になった。
分類が「テロの実行」に変わった組織的威力業務妨害や組織的強要は、市民団体や労働組合への適用が懸念されている。
法務省は取材に「いくつかにまたがって分類できるものがある。内訳の変更は検討段階で整理した」と説明。これまで、どの罪がどの分類に当たるか詳細は明らかにしていなかった。

◆テロ対策強調の意味合い
立命館大学松宮孝明教授(刑事法)の話> ちょっとでも「テロの実行」を増やして「テロ対策」を強調する意味合いがあったのだろう。対象犯罪でテロの実行に分類されている中にも、一般の人がイメージするテロとは関係ないものがたくさん入っている。どう分類したかだけでなく、対象から除外した罪についても根拠を示すべきだ。
共謀罪法案の対象犯罪> 政府が共謀罪創設の根拠とする国際組織犯罪防止条約は、法定刑が死刑や4年以上の懲役・禁錮の罪を共謀罪の対象とするよう求め、国内の現行法の対象犯罪数は676。「数が多すぎる」との批判を受け、政府は277に削減した組織犯罪処罰法改正案を今国会に提出した。対象犯罪については、2005年の共謀罪法案の基準で計算すると、277ではなく316になることも判明している。