子どもの貧困 入学・卒業に準備金 民間団体事業へ広がる寄付 - 東京新聞(2017年4月27日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017042702000127.html
http://megalodon.jp/2017-0427-1045-02/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201704/CK2017042702000127.html

「みんながあなたのこと思っているよ」−。子どもの貧困が広がる中、入学の準備費用を給付する取り組みに、民間団体が力を入れ始めている。本来、喜ばしいできごとなのに、ランドセルや制服などの費用捻出に悩む家庭を支援するのが目的だ。「春のSOS」を受け止める団体の関係者からは、国が問題解決に本腰を入れるよう求める声も上がる。 (小林由比)
「四月から工業高校に通います。電子辞書やかばんなど必要なものを買うことができました」。子どもの貧困問題に取り組む公益財団法人「あすのば」(東京都港区)には、給付金を受け取った子どもや保護者から、毎日のようにお礼の手紙が届いている。
昨春、給付金事業を開始。住民税非課税世帯や児童養護施設などで暮らす子どもなどを対象に、小中学校への入学に三万円、中学卒業に四万円、高校卒業に五万円を給付している。二回目となる今春、前回の十倍となる約一億五百万円が集まり、約二千二百人に給付した。事業が雑誌「通販生活」に取り上げられたことで、読者二万五千八百六十二人から七千百八十八万円の寄付が集まった。後の三千万円余は高校生や大学生が街頭募金で集めた。
小河光治代表理事は「入学、就職などみんながおめでとうと祝福される時期、つらい思いをする子どもたちもいる。あなたのことを思っている人がこんなにいるよ、ということを伝えることができた」と寄付者らに感謝する。
ひとり親家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」も今春初めて、三百六十五人に三万円の入学お祝い金を届けた。
赤石千衣子理事長は、中学、高校の制服代などの捻出が難しい、との悩みを母親たちから聞いてきた。お祝い金制度の創設に突き動かされたきっかけは、二〇一四年に千葉県銚子市で、県営住宅の家賃を滞納した母親が娘を絞殺した事件だった。母親は娘の中学入学の費用が用意できず、ヤミ金から借金し、追い詰められていた。「こんな事件を二度と起こしてはならない」

今回お祝い金を送った家庭の年間の就労収入は、ゼロ〜百万円の世帯が47%に上った。祝い金がなかった場合、費用をどのように準備するつもりだったかをアンケートで尋ねたところ、「消費者金融やカードローン」と回答した母親もいた。食費の節約や働く時間を増やすとの回答も目立った。
赤石さんは、「選考から漏れた世帯も十分苦しい状況だった。善意の方に頼るだけでは限界がある。義務教育を本当の意味で無償にするなど国が何とかすべきだ」と指摘する。
◆国も補助額倍増 義務教育、就学予定にも
経済的に苦しい家庭の子どもが義務教育を受けるのに必要な資金を支給する自治体の就学援助制度にも、制服代などにあてる入学準備金がある。国は本年度、自治体への補助額を引き上げ、一人当たりの支給額を小学生で四万六百円、中学生で四万七千四百円に倍増。三月には規則を変更し、補助の対象を、まだ学校に通っていない「就学予定者」に拡大した。来春からは、ランドセルなどが買えるよう、小学校入学前の準備金支給が可能になった。
ただ、就学援助で国庫補助の対象になるのは、生活保護を受ける「要保護」世帯の子ども(約十四万人)のみ。自治体が生活保護世帯に近い状態と認定した「準要保護」世帯の子ども(約百三十五万人)への支給は市区町村が独自に行う。
文科省の担当者は「準要保護世帯に対しても、単価の引き上げや支給時期前倒しの動きが広がっていくことを期待する」とする。
あすのばの小河代表理事は「自治体によって、準要保護世帯への支給額に差が出てしまわないようにしてほしい」と話す。また、「義務教育以上にお金がかかる高校入学生への支援についても議論していく必要がある」と指摘している。