公文書管理 抜け道許さぬ見直しを - 朝日新聞(2017年4月24日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12906883.html?ref=editorial_backnumber
http://megalodon.jp/2017-0424-1559-12/www.asahi.com/paper/editorial2.html?iref=comtop_shasetsu_02

「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るもの」
2011年に施行された公文書管理法は、公文書についてこう定義し、行政機関の文書作成や管理ルールの統一化を目指した。情報公開法(01年施行)とあわせ、行政の透明性を高めるための「車の両輪」だ。
ところが、国の公務員がこの趣旨に反する行為を相次いでしている。民主主義の根幹を揺るがしかねない深刻な事態だ。
学校法人・森友学園への国有地売却の経緯に関する文書について、財務省は国会で「廃棄した」との説明を繰り返す。
防衛省は、南スーダンの国連平和維持活動で陸上自衛隊派遣部隊が現地情勢を記録した日報を「廃棄した」としていたが、後日、データが見つかった。
なぜそんなに簡単に廃棄できるのか。両省が処分したという文書は、いずれも内部で保存期間が「1年未満」と判断された文書だ。
行政機関の職員の文書の保存期間は、各省庁が公文書管理法のガイドラインに沿って、それぞれ行政文書管理規則を設けて決めている。文書の重要性や性格をもとに「10年」「30年」などと分類するが、その判断は、各省庁に委ねられている。
保存期間が1年以上の文書であれば、行政文書ファイル管理簿に記載し、廃棄する場合、内閣総理大臣の同意を得るように定めている。しかし、1年未満ならば管理簿にも載せず、廃棄できる。どんな文書がどれだけあったのか、外部からは知りようがない。
内閣府公文書管理委員会の委員長代理を務める三宅弘弁護士は「法の抜け穴が明らかになった」と指摘する。
文書廃棄後に問題が発覚した場合、検証が困難になることは、森友学園の例で明らかだ。「1年未満」が適切な判断だったか大いに疑問だ。公にしたくない情報を恣意(しい)的に分類しているのではとの疑念も生じる。
NPO法人「情報公開クリアリングハウス」は、公文書管理法の改正に関する意見書をまとめた。1年未満の保存期間の文書が「ブラックボックス化している」と指摘し、この区分の原則廃止や廃棄文書の一覧の公表などを提案する。
政府はこうした意見に耳を傾け、「抜け道」を許さない法改正に早急に取り組むべきだ。
国有地売却の経緯も文書がないならば関係職員から聞き取りをして報告書を作るのが筋だ。情報公開の後退は許されない。