(私説・論説室から)歴史をゆがめる文科省 - 東京新聞(2017年4月24日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017042402000139.html
http://megalodon.jp/2017-0424-1120-17/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2017042402000139.html

休火山という言葉をご存じですか。私が子どものころは「歴史時代に噴火の記録があっても今は活動していない火山は休火山」と習いました。たとえば「富士山は休火山」と。しかし、火山の寿命は長いことが分かり、専門家は噴火する可能性がある火山を全て「活火山」に分類するようになりました。学校でも休火山という言葉は教えていません。
研究が進むと、教科書の内容が書き換えられるのは当たり前だと思っていました。
そんな考え方は間違っていたようです。文部科学省は学習指導要領の改定案で「鎖国」を「(江戸時代に鎖国はなかったので)江戸幕府の対外政策」と改めるとしたのを、パブリックコメントを理由に元に戻したのです。
江戸時代も海外との交流や交易がありました。鎖国政策はなかったという考え方が今は主流なので改定案ができたようです。
鎖国は閉鎖的でマイナスイメージが強い。「鎖国」史観という言葉さえあります。歴史教育に熱心な人たちの言い方を借りれば、文科省の方針転換は「歴史をゆがめ、日本人をおとしめる」ことになります。
パブリックコメントには「『開国』はあるのに鎖国がなくなると教えにくい」という声があったそうです。教員のコメントならば、指導要領ではなく、指導方法を考えるべきです。日ごろは軽視されがちなパブリックコメントだけに、不思議です。 (井上能行)