実質審議入りの「共謀罪」法案 多数決で大臣隠しの異常 - 毎日新聞(2017年4月21日)

https://mainichi.jp/articles/20170421/ddm/005/070/088000c
http://archive.is/2017.04.20-222928/http://mainichi.jp/articles/20170421/ddm/005/070/088000c

共謀罪」の要件を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の実質審議が衆院法務委員会で始まった。
委員会の冒頭、委員長(自民)が野党の反対を抑えて、法務省刑事局長を政府参考人として呼ぶことを職権で採決し、賛成多数で出席が決まった。答弁が不安定な金田勝年法相の代わりに答えさせる狙いとみられる。極めて乱暴な委員会運営だ。
金田法相は法案の提出責任者だ。その大臣の答弁が不安ならそもそも法案に問題があるのではないか。
政治家主体の国会審議にする狙いから、1999年に国会活性化法が施行され、官僚の委員会出席は原則として禁じられた。
政府参考人制度は、官僚が行政の技術的な点などについて閣僚を補佐するために導入された。
より充実した審議のために補佐は認められていい。ただし、参考人出席は委員会が全会一致で議決するのが慣例だった。野党の了承がないままの採決は衆院で初めてという。異常な慣例破りである。
法案は、2人以上で犯罪を事前に計画・合意し、実行のための準備行為をすれば罰せられる内容だ。
組織的犯罪集団を適用対象と明記するが、一般市民も対象になり得るのではないかという点が最大の懸念材料だ。さらに、犯行着手前の「合意」を処罰するため、警察の捜査次第で、監視社会に道を開くのではないかという不安の声も強い。
金田法相は2月、法案に関して「国会提出後に議論すべきだ」と質問封じとも受け取れる文書を報道機関に公表し、わずか1日で撤回した。
その後もあいまいな答弁で野党に追及される場面が続いた。委員会の審議中、補佐する事務方が耳打ちする光景は最近でも見られる。
審議入りした法務委員会でも、処罰対象の団体が過去の共謀罪法案とどう違うのか野党委員に聞かれ、先に答弁に立った刑事局長の説明をほぼそのまま繰り返す場面があった。
金田法相は「実務的な部分は事務方がコメントするのは問題ない」と述べるが、法務委員会の審議に入り、質問の大半は法案の根幹に関わることだ。もう弁解は通用しない。
法相が法案の中身について自信をもって説明できなければ、法案そのものへの信頼が失われるだろう。