<諫早干拓訴訟>司法のねじれ、解決みえず - 毎日新聞(2017年4月17日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170417-00000104-mai-soci
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“司法判断のねじれ”は決定的になった。国営諫早湾干拓事業諫干長崎県)を巡り、国に潮受け堤防の開門差し止めを命じた17日の長崎地裁判決。干拓営農者らは2013年の仮処分決定から続く3度目の勝訴に「開門を認めない司法の流れを決定づけるものだ」と強調した。漁業者側は「開門以外に有明海再生の道はない」と国に控訴を求めた。【加藤小夜、池田美欧、浅野孝仁、今野悠貴】
長崎地裁前では判決後、時折激しい雨が降る中、原告の営農者側弁護団が「勝訴」「差止判断三度続く!」と書かれた紙を掲げた。
原告の町田浩徳さん(54)=長崎県雲仙市=は法廷で傍聴し喜びをかみしめた。潮受け堤防の閉め切り後に造られた中央干拓地の約11ヘクタールで、ブロッコリーやタマネギなどを栽培する。初期投資は数千万円。最近ようやく「常に水があり排水設備も整っている。作業するには最高の場所」と思えるようになった。
開門調査を命じた2010年の福岡高裁判決を国が上告せず確定させたことに「到底納得できない」と訴訟に加わった。勝訴に安堵(あんど)しつつ「このまま判決を確定させてほしい」と話した。
営農者側の山下俊夫弁護団長は記者会見で「国は相反する法的義務を課せられているという言い訳に終始せず、開門せずに解決する方針にかじを切るべき時期に来ている」と訴えた。長崎県の中村法道知事も「国はやみくもに訴訟を長引かせるのではなく控訴せず、開門しない方向で真の有明海再生をめざしていただきたい」とコメントした。
「漁民だけが一方的に被害を受けている。判決は不当だ」。国側補助参加人として訴訟に加わるタイラギ漁師、平方宣清(のぶきよ)さん(64)=佐賀県太良町=は怒りを込める。堤防閉め切り後、タイラギの漁獲量は激減し福岡・佐賀では5季連続の休漁。タイラギ漁を営みながら親子3代で一緒に暮らすつもりだったが、稼ぐのは難しく長男は町を離れた。「諫干に夢を奪われてしまった」。国に控訴を求め「開門判決を訴えていきたい」と話した。
開門派弁護団の馬奈木昭雄弁護団長は「高裁の確定判決があるのに、どうして差し止められるのか。極めておかしな偏った判断で信じがたい」と痛烈に非難。18日にも国側補助参加人として福岡高裁に控訴する方針だが、最終的には国の控訴が必要。しかし「国は我々開門派の主張を採用せず負ける道を自ら選んだ」と疑念を示す。「話し合い以外に本件の解決はなく、有明海の再生には開門以外ない。それを求めて闘い続ける」と徹底抗戦の構えを見せた。