親族間の事件 背景に「介護疲れ」 動機は「将来悲観」 - 東京新聞(2017年4月10日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017041090135448.html
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二〇一四年に全国の警察が摘発した親族間の未遂を含む殺人事件や傷害致死事件は計二百七十二件で、動機で最も多いのは「将来を悲観」だったことが、警察庁の集計で分かった。被害者は「父母」が三割超で最多。高齢化社会で、親の介護疲れなどが背景にある実態もうかがえる。
担当者は「親族間犯罪は一般の街頭犯罪抑止対策が通じず防止が難しい」としている。
警察庁によると、二百七十二件の内訳は殺人が百六十八件、殺人未遂(治療期間一カ月以上)が七十四件、傷害致死が三十件。被害者は「父母」が33%で最も多く、次いで「配偶者」の27%、「子」の25%などだった。
動機別では、介護や育児疲れ、金銭困窮などによる「将来を悲観」が33%を占めた。これに痴情のもつれや金銭トラブルなどによる「不仲・トラブル」25%、「加害者の心神喪失」21%が続き、これらで全体のほぼ八割に達した。
さらに被害者別に動機を見ると、「子」が被害者となった場合は「将来を悲観」が59%と割合がさらに高くなった。
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警察庁が十日に明らかにした親族間による殺人や傷害致死事件の分析では、「将来を悲観」という動機が最も多かった。被害者は「父母」が最多という結果と合わせると、高齢化社会で親の介護などから疲弊し、追い詰められた子どもが犯行に及んでしまうという姿も透けて見えてくる。
「非常にまじめで、頑張りすぎる人」。介護者サポートネットワークセンター「アラジン」の牧野史子理事長は、介護などの末に親へ危害を加えてしまう人について「周りに迷惑をかけないようにと考え、社会的、心理的に孤立していく」と説明する。
最近の介護を取り巻く社会的な環境について「介護保険が後退し、特別養護老人ホームにも入りにくくなっている。今後は、ますます事件は増えていくだろう」と指摘。介護者の支援を専門で行う人材と、その拠点が必要になると訴える。
警察庁によると、昨年一年間に「介護・看病疲れ」が動機となった殺人の摘発は四十三件。殺人全体の摘発件数は減少傾向にある中でも、ここ数年は横ばいが続いている。
介護や看病が背景となる事件を防ごうと、支援の輪は自治体にも徐々に広がっている。東京都北区では、介護者らから個別に話を聞いてカウンセリングする「こころの相談室」を開催。昨年度は百二十五回を重ね、参加者らからは「親を虐待しそうになる」「介護しなくちゃいけないと思うけどやりたくない」などの声が寄せられた。