中曽根内閣は「教育勅語」を否定し是正勧告を出していた - 日刊ゲンダイDIGITAL(2017年4月5日)

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安倍政権の「教育思想」は極めて危うい。大阪市の学校法人「森友学園」が運営する「塚本幼稚園」で、「教育勅語」を園児に素読させていた問題。軍国主義の象徴とも言える教育に対し、野党側は猛反発。異を唱える野党の質問主意書に対し、安倍政権は「(学校で)教材として用いることまでは否定されない」との答弁書閣議決定したが、かつて教育勅語を生徒に朗読させていた私学に対し、当時の政府は問題を認め、是正勧告を出していた。
中曽根内閣の1983年5月11日付の参院決算委の議事録によると、社会党本岡昭次議員が、島根県の私立高で、建国記念日に学校行事で教育勅語が取り上げられていることを問題視。当時の瀬戸山三男文部大臣にこう詰め寄った。
「(教育勅語を)校長が単に読むだけでなく、校長の朗読に合わせて生徒が立って『朕惟フニ我カ皇祖皇宗』とずっと一緒に読んでいる」「どのような措置を講じるおつもりか」
これに対し、瀬戸山大臣は「率直に言って遺憾なこと」「現在の憲法教育基本法のもとでは不適切」と問題を認めつつ、「島根県を通じてそういうことのないように指導をしてくれと、勧告しておる」と答弁していたのだ。さらに、翌84年1月25日の同委員会でも、本岡議員はこの問題を指摘。きちんと是正勧告したのかどうか、説明を求め、文部省側は「島根県当局に対してこういう内容についての是正を指導してもらいたいということを指導して参った」「是正をしていくようにという私学の当局者に指導を繰り返してきております」と報告していた。つまり、時の政府は教育勅語を明確に否定していたわけだ。
過去の政府見解では、教育勅語を否定していたにもかかわらず、なぜ、今の安倍政権はスルーなのか。菅官房長官も3日、教育勅語を是認するような内容の閣議決定について「憲法教育基本法に反しないよう適切な配慮の下で取り扱うことまでは否定しない」と言っていたが、こんなデタラメはない。本紙で「『教育勅語』を学校教育に導入するのは違憲」と断じていた憲法学者で慶大名誉教授の小林節氏はこう言った。
「安倍政権は『親孝行』や『兄弟は仲よく』といった教育勅語の徳目は教育上、役に立つ価値観であると説明している。しかし、そういった価値観は『世界の常識』と言えるもので、わざわざ教育勅語を持ち出すべきものではありません。危険なのは『一身を捧げて皇室国家の為につくせ』という文言。これは『天皇主権の下に基本的人権を認めない』という趣旨で、明確に現行の憲法に反しています」
時代に逆行している安倍政権である。